新型コロナウイルスの影響が各方面に広がっている。野球界で見ると、日本国内では春の甲子園が中止となり、NPBも開幕が4月24日以降へ延期となった。その他の各種大会も中止、もしくは延期の措置が取られている。アメリカではMLBの開幕が延期となり、一部の日本人選手は帰国したほどだ。
気分が晴れやかになる球春到来の時期に沈んでしまう話題が多く、気が滅入ってしまう野球ファンも多いのではないだろうか。
そんなときにおすすめしたいのが『別冊野球太郎 2020春 ドラフト候補最新ランキング』(以下、今号)である。
現時点における今年のドラフト候補たちの情報が満載であり、野球ファンなら楽しめること間違い無しの一冊だ。今回はその一端をご紹介したい。
今号のメイントピックスはもちろん、「2020春ドラフト候補最新ランキング」である。表紙でも黄色い文字で大きく打ち出されており、力の入れ具合が伝わってくる。
このランキングの総合部門を見ると1位は山崎伊織(東海大、投手)、2位は伊藤大海(苫小牧駒大、投手)、3位に佐藤輝明(近畿大、三塁手)となっている。
大学の春季リーグ戦をはじめ、高校、社会人も含めたアマチュアの主要な大会が始まる前の時点では、即戦力となりうる大学生3人が上位を占めた。
巻頭のカラーページでは高校生、大学生、社会人とカテゴリーごと、ポジションごとのランキングが飛び込んでくる。さらには通常のドラフト情報誌ではあまり見ることのない「逆方向に飛ばす部門」や「守備職人部門」といった目を惹くものもある。
ちなみに「逆方向に飛ばす部門」の1位は今川優馬(JFE東日本、左翼手)となっている。あくまで野球太郎的な基準ではあるが、一風変わったドラフト候補たちの見方ができる作りになっているのはおもしろい。
様々なランキングの次にくるのは、「アマチュア野球の歩き方2020」である。アマチュア野球のみどころを細かく説明している企画だが、よくある高校、大学、社会人といったカテゴリー分けではない。
北海道、東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州と8つの地区に分け、それぞれの地区ごとに解説。観戦推奨チームの紹介、注目選手のインタビュー、野球太郎ライター陣による「私が気になる選手たち2020」、有望選手リストが掲載されている。
たとえば東海地区では観戦推奨チームとして中京大中京高校、中部学院大学、三菱自動車岡崎を挙げている。また、注目選手のインタビュー記事としては高橋宏斗(中京大中京高、投手)と栗林良吏(トヨタ自動車、投手)が登場。高橋は高橋源一郎監督の証言も掲載。両者ともNPBスカウトのコメントも掲載されている。
「有望選手リスト」にピックアップされた大学生、高校生では、今年のドラフト候補だけでなく、下級生についても言及。来年以降のドラフトにつながるリストだ。
地区ごとの有力選手を探すもよし、お住まいの地区の観戦ガイド的な使い方もよし、と多面的な楽しみ方ができる。
『野球太郎』はドラフト情報に強いとの定評があるが、もちろん本誌はドラNPB12球団のこともしっかりとカバーしている。
今号では「プロ野球12球団松坂世代から大谷世代までの貢献度を分析!」と題して、各球団の特徴を探っている。
1998年から2012年の15年間に指名された選手たちを高卒、大卒、高卒社会人、大卒社会人と4つのカテゴリーに分け、野球太郎独自に設けた成功基準(規定到達や通算出場試合数など)に照らしあわせ、どれくらいの割合で成功したか否かを考察している。
たとえば日本シリーズ3連覇中のソフトバンクは「高卒は育成指名を含めて主力に成長しているが、一方で1軍未出場のままユニフォームを脱いでいる選手も多く明暗が分かれている」(要約)とまとめられている。
またセ・リーグ2連覇を目指す巨人に関しては「高卒投手は積極指名も育てきれず1軍未出場最多」と、巨人ファンには耳の痛いことも記されている。
このように各球団ごとに指名した選手のその後を追いかけているわけだ。ドラフト会議時に球団の特徴がわかれば、楽しみはより一層広がるだろう。
もちろん、ここで紹介した以外にも多くの記事が載っている。特に各地の注目選手のインタビューは満載だ。プロ・アマ問わず、野球ほとんど開催できないこんな時期だからこそ、じっくりと手にとって読んで欲しい。
文=勝田聡(かつた・さとし)