週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

〈スカウト陣に見解を問う〉プロ球団スカウト20人に聞きました!

 10月23日のドラフト会議当日まで、あとわずか。スカウト陣の動向も日々慌ただしくなってきている。そんな中、スカウト21人が忙しい合間を縫って、『野球太郎』の企画に協力してくれた。今年の即戦力の選手や、話題の安樂智大をどのように見ているか、スカウト個人としての意見を聞いてみた。

今年のドラフト、即戦力の選手は誰か?

 まず、今年のドラフト候補のうち「即戦力といえば」、と聞いたところ、21人中15人から有原航平(早稲田大)の名前が挙がった。今秋のリーグ戦では、右ヒジの違和感から1試合、リリーフで3回のみしか投げていないが、体のポテンシャル、ボールの強さだけでなく、変化球の精度やキレも含めて、圧倒的な評価を浴びている。中には「田中将大(ヤンキース)クラスの投手になる素材」と期待するスカウトや、今年の即戦力といえるのは「有原くんぐらいかな」というスカウトもいる。



 2番目は、3票を集めたのは同じく早稲田大の中村奨吾。大学1年時や今年の大学日本代表では外野を、大学2年以降は二塁を守り、打順は1番でも4番でも6番も打てる実戦的な万能型な選手だ。右投左打の選手が増えている中で、「右打ち」というのもスカウトには好印象だったようだ。走攻守の三拍子を評価するコメントが多かった。


 その他は1票だが、安樂智大(済美高)と野間峻祥(中部学院大)の名前が挙がった。安樂の場合は「環境に慣れて体力が上がれば8月くらいからは使える」と予想されている。野間は特に走塁面で、「一歩目の思い切りがよく、三遊間を破るヒットで、二塁からホームまで還ってこられる」と評価される。

▲野間峻祥(中部学院大)

大学・社会人で急成長した選手は?

 即戦力とはいわずとも、大学生、社会人で今年、評価が上がった選手をたずねてみると、野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜)と竹下真吾(ヤマハ)の2投手が3票を集めた。

 野村は静清高でセンバツに出場し、長身ながらもコントロールがいいと評判だった。今年ドラフト解禁となる高卒3年目でまだ若く、今年に入って、パワーアップした部分がピッチングにも表れ、「ストレートも150キロ近いキレのあるボールを投げていました」、「どんどん伸びていきます」とスカウトからの評価も上々だ。竹下は八幡高から九州共立大に進み、昨年4月にヤマハに入社。大学の同期に川満寛弥(ロッテ)、1学年下に大瀬良大地(広島)がいたこともあり、大学での実績は乏しいが、社会人になって素質が開花しはじめた。社会人で強いボールに磨きがかかり、「速い球を投げる左ピッチャーは貴重です」と評価されている。試合経験が少ないため、これからの伸びしろにも期待できる。

▲野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜)

 2票を集めたのは、横山雄哉(新日鐵住金鹿島)、上杉芳貴(トヨタ自動車)、山?康晃(亜細亜大)の3投手。高卒3年目の横山、26歳の上杉、常勝チーム・亜細亜大で投げ続けた山?と三者三様の顔ぶれだ。横山は体格もよく、速いボールも投げられる。しかも将来性ある左腕。豊田西高から中京大に進み、トヨタ自動車に入社した上杉は、大学卒業時、社会人2年目でもドラフト候補として名前が挙がった。3年目の昨年はケガなどもあり不調に陥ったが、今年は復活した。プロ入りとなれば、先発に中継ぎに活躍してくれそうだ。帝京高では1学年下の伊藤拓郎(元DeNA)と鈴木昇太(東海大)とで140キロトリオを形成していた山?。「去年のようにストレートだけで押すピッチングも、今年のように打たせて取るピッチングもでき」幅が広がったと評判だ。

▲横山雄哉(新日鐵住金鹿島)

 少数意見では、即戦力でも名前が挙がった野間峻祥(中部大)や福田将儀(中央大)、倉本寿彦(日本新薬)らの評価が上がった。福田は走守のレベルは高い選手だったが、ここにきて、打撃がよくなった(今秋のリーグ戦で2本塁打に走力を生かした三塁打が3本、二塁打が3本と塁打で換算するとトップの成績だ)。倉本は横浜高、創価大と強豪校を経てきた選手で、社会人2年目の今年、「形、技術に成長が見られます」。

甲子園で最も評価が上がった投手は大学へ

 続いて、夏の甲子園で評価が上がった選手を聞いてみた。松本裕樹(盛岡大付高)、脇本直人(健大高崎高)、岡本和真(智辯学園高)といったプロ志望届を提出した面々を抑えて、大学進学予定の森田駿哉(富山商高)が6票を獲得した。「ストレート、スライダーともにキレ、制球力がある」、「マウンドさばきなど、自信や雰囲気が出てきた」と称賛コメントが並ぶ。「プロでも即戦力でやれる」と評価された投球は、大学でも早々に活躍することを期待したくなるほどだ。

 5票を集めた岡本が2位に入った。「変化球に対応できるようになった」、「打撃面では見るたびに驚かされる」とのコメントが並ぶ。続いて脇本と松本が4票で並んだ。脇本は、「なぜいままで名前が挙がってこなかったのか?」と驚いたスカウトのコメントも。甲子園という大舞台で積極果敢にプレーできるメンタル面も評価が高い。松本はヒジ痛により甲子園で全力投球できなかったことが、逆に「技」の新たな引き出しを披露することになった。

▲岡本和真(智辯学園高)

 ほかには佐野皓大(大分高)は、甲子園前は150キロに及ぶストレートが評価されていたが、この夏は「投手として大事な体の調整能力をつかんだかなという印象を受けました。外角低めを自分のバランスで投げられています」とスカウトは見ている。石川直也(山形中央高)、岩下大輝(星稜高)らの成長も見応えがあった。

今年の目玉・安樂智大、プロで成功するためには……

 高校生ながら、即戦力になれるとも評価される安樂智大がプロで活躍には、何が必要かを聞いたところ……

1・ケガしない体――9人
2・ストレートの質――4人
3・武器になる変化球――2人

 やはり、2年秋に発症した「右腕尺骨神経麻痺」の状態がスカウトも気になるようだ。逆に、いまのケガの状態が一番気になるということは、それ以外はプロで活躍できるポテンシャルの持ち主だと評価されている。ただ、今年、復帰してからのピッチングを見ているスカウトは、「今年見る限りではいいんですよね。スピードは出ていないけれど、角度が上がって、アウトコースにいい角度で投げられるようになってきた」とケガは問題なく、むしろストレートの質はよくなってきていると見ている。この延長線上でコンディションを整え、ストレートもよくなっていけば、早い段階で活躍が見られるはずだ。「吸収する意欲がある」「他の投手が経験していない紆余曲折を経験している点も大きい。この挫折経験こそが最大の武器」とメンタル面を評価しているスカウトもいた。



 有原航平や安樂智大へのスカウトの評価は非常に高く、チーム事情や、ドラフトでの駆け引きを無視すれば、この2人に指名が集まるはず……。さて、実際のドラフト会議では、12球団の1位指名選手はどのような顔ぶれになるのか? 名前が挙がったスカウトから評価が高い選手たちは、何位でどの球団から指名を受けるのだろうか? 今から当日の結果が楽しみだ。

(この記事は『野球太郎No.012』の記事を再構成したものです)

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方