2014年春、テレビドラマで野球にまつわる作品が2本放送中であり、また映画が1本公開された。映像作品といえば、週刊少年マガジンで好評連載中の『ダイヤのA(エース)』もアニメが放送中と、偶然にも野球作品が多いクールになっている。
そこで『週刊野球太郎』では、そのような作品を、いろいろな角度から紹介。原作や書籍視点で神田神保町古書店・ビブリオ店主が作品そのものや関連する書籍を解説。映像作品視点については、現在放送中のドラマについては、原作との違いや今後の注目点など、映画は概要とみどころを紹介していく。
第2回目は『ミスターGO!』という韓国映画。
本作はただ単にゴリラが野球で大暴れする映画ではない。スター選手を巡る球団同士や代理人との駆け引きも見どころのひとつだ。「GO争奪戦」には日本球界からも中日と巨人が参戦。その中日のオーナー「イトウ」役をオダギリジョーが“怪演”している。「ゴリラ」という飛び道具も凌駕しかねないオダギリジョーの存在感は、巨人の影の薄さがむしろ気の毒になってしまうほどだった。
もうひとつ、この映画を観て考えたのは、中日と映画業界の切っても切れない関係性だ。日本球界を描いた映画といえば、1992年の映画『ミスター・ベースボール』(日本では1993年公開)を思い出す人も多いはず。あの映画の舞台がまさに中日ドラゴンズだった。
中日の監督を高倉健が演じ、MLBのスーパースターが日本文化と「野球とベースボールの違い」に翻弄されながらも少しずつチームに溶け込んでいく様を描いた名作だ。だが、改めてこの映画が貴重なのはナゴヤ球場やそのベンチ裏、応援席の様子などが克明に描かれている点だろう。「ロッカールームは土足厳禁」など事実とは異なる映画的表現も多いが、「日本球界の映像資料」として貴重なものであるのは間違いない。
また、球団マスコット「ドアラ」の影に隠れがちなファンクラブマスコット「ガブリ」のデザインは巨匠・宮崎駿監督。スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫氏が熱狂的なドラゴンズファンであることから実現したコラボレーションだ。
そして、映画といって忘れてはならないのが落合博満GMだ。高校時代、野球の練習よりも映画を観ていた時間のほうが長い、という逸話もあるほどの映画好きである落合GMは昨年、映画批評本『戦士の休息』を上梓している。
だからこそ思う。もっともっと、中日が全面に出た映画があってもいいのではないか。何なら落合GMが「監督」としてメガホンを握ったっていい。「ファンサービスとは何か」でここ数年揺れている球団だからこそ、そのくらい思い切ったことを期待したい……突飛なゴリラ映画を観たからか、突飛な願望を抱いてしまった。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/@oguman1977
■動画出演者・プロフィール
小野祥之(おの・よしゆき)/プロ・アマ問わず野球界にて知る人ぞ知る、野球本の品揃え日本一の古本屋『BIBLIO(ビブリオ)』の店主。東京・神保町でお店を切り盛りしつつ、仕事で日本各地を飛び回る傍ら、趣味はボウリングと、まだまだ謎は多い。
鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。“ファン目線を大切に”をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite
■お店紹介
『BIBLIO』(ビブリオ)
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