原稿執筆時点では、新型コロナウイルスの影響でセンバツが開催されるかどうか定かではないが、ふとしたときに話せる高校野球の意外と知らない小ネタを紹介したい。
2019年は春季近畿大会と秋季近畿大会の2度にわたって、智辯学園と智辯和歌山の兄弟校対決があり、近畿の高校野球シーンを大いに盛り上げた。両校はセンバツの出場も決まっており、開催となれば聖地での対決も期待されている。
両校は胸に大きく「智辯」と書かれたユニフォームで知られており、攻守の見分けがつかないと話題になったが、実はメーカーが違うため、左袖の校章のほかにも細かな色合いなどが少し異なる。
それでも微差なのだが、もっともわかりやすいのは「智辯」の文字の入れ方。智辯学園は字間がやや狭く、智辯和歌山は字間がやや広い。これさえ覚えておけば、智辯学園と智辯和歌山を見分けられる「通」ぶれること間違いなし!
代々、高校野球ファンに数秒間の“脳の整理時間”を与えて続けてきたのは、愛知・中京大中京と岐阜・中京学院大中京だ。これまでの校名の変遷を見ると、かなりややこしい。
■中京大中京(愛知)
中京商→中京→中京大中京
■中京学院大中京(岐阜)
中京→中京商→中京→中京学院大中京
両校ともに中京、中京商という校名を使っていた時期がある。2000年代は愛知・中京大中京、岐阜・中京で落ち着いていたのだが、2017年に岐阜の方が中京学院大中京に校名を変え、アップデートが必要になった。
しかし、中京学院大中京は今年、校名を「中京」に戻す予定だという。
一足早く夏の甲子園の豆知識も。今年で102回目を迎える夏の甲子園だが、実はこれまで、甲子園切符をかけた夏の地方選手権大会にすべて出場している学校は15校と数少ない。第100回大会では皆勤の栄誉を称され、各校主将が聖地を行進した。皆勤校は以下の通り。
旭丘(愛知)、時習館(愛知)、岐阜(岐阜)、同志社(京都)、山城(京都)、西京(京都)、市岡(大阪)、関西学院(兵庫)、兵庫(兵庫)、神戸(兵庫)、桐蔭(和歌山)、鳥取西(鳥取)、米子東(鳥取)、松江北(島根)、大社(島根)
長い歴史に思わずニヤリとしてしまうこともある。旭丘のユニフォームはど真ん中に縦に「旭高」、その横を一対のシャチホコが飾る伝統的なレトロユニフォームであり、同志社も大きく「DC」と書かれた伝統のユニフォーム。野球黎明期の匂いを今も残している。
前述の通り、センバツ開催の是非が議論されているが、これまでの夏の全国大会で中止になったのは、1918年の一度きりだ(1942〜1945年の太平洋戦争による中断を除く)。
その原因は「米騒動」。資本主義の発展やシベリア出兵により、米価が急騰し、各地で騒擾になった。
富山で騒擾が始まったのは7月末。鳴尾球場での全国大会は8月14日からの予定だったが、騒擾はあっという間に関西にも波及。主催の朝日新聞社は一度延期を発表したが、16日になって中止を決めた。
米騒動に火をつけたのは、当時の政府の取り締まり策や予算編成が不十分だったといわれている。
文=落合初春(おちあい・もとはる)