【この記事の読みどころ】
・カープのロード勝率はセ1位、スラィリーがくればさらに勝率アップ!
・スラィリー、広島では遊び疲れる?
・7月29日に生まれたスラィリー! 今年は20周年!
混戦続くセ・リーグ。その中にあって、もうひと踏ん張りしなければならないチームが広島東洋カープだろう。そもそも、開幕前は優勝候補の最右翼にあげられながら、スタートでつまずいて最下位が定位置に。今もゲーム差は少ないとはいえ5位で落ち着いてしまっている。
7月27日現在、40勝45敗1分と借金5の5位・カープ。だが、興味深いのはホーム・ロードの勝敗内訳だ。ホームで22勝22敗1分の勝率5割。セ・リーグ6球団でホームでの貯金がないのは広島だけ。その一方で、ロードでは18勝23敗。ロード勝率はセ・リーグ1位なのだ。
そんなロードでの健闘要因の1つが球団マスコット・スラィリーの存在、という説がある。今季、ロードの試合にスラィリーも同行したのは12試合で、内訳はなんと8勝4敗。あの東京スポーツが「スラィリーの神通力」として記事にした(6月18日付)ほど高い勝率を誇っている。
実は今春、スラィリーは自身初となるフォトブック『スラィリー、じゃけん。』を出版している。
厳島神社、宮島などの観光名所にはじまり、史跡や景勝地、お好み焼き屋などをひたすら遊び回り、ときにセミヌードまで披露しながら撮った写真の数々が収録された本書。その副題として記されていた文字が「遊び疲れた、宮島の帰り……」だった。
遊び疲れるほど観光地巡りをしているようでは、本業が疎かになってしまうのも自明の理だ。
そもそも、なぜスラィリーはフォトブックを発売できたのか? 全国的にカープ人気だから……といっても、正直なところスラィリーは人気・知名度ともマスコットの中では決して高いほうではない。
たとえば、スポーツ紙で各球団の状況を説明する際、泣いたり笑ったりするマスコットイラストを使うのは常套手段だ。その際、カープを表現する際に登場するのはほとんどの場合、スラィリーではなくカープ坊や。カープのマスコットは「カープ坊や」と信じている人も多いはずだ(※カープ坊やはマスコットではなく「ペットマーク」に当たる)。
そんな不人気キャラにもかかわらず、なぜフォトブックを発売できたかといえば、今季がスラィリーにとってデビュー20周年のメモリアルイヤーにあたるからだ。昨季、同じく20周年で数々の書籍やDVDを発売したつば九郎&ドアラに負けじ! と書籍化に至ったことは想像に難くない。
スラィリーがはじめて球団マスコットとして登場したのが1995年7月29日の中日戦。今年の7月29日はヤクルト戦が節目の記念日にあたる。
スラィリーが歩んだ20年は、まさにカープにとって暗黒の20年。スラィリーのデビュー直後(1995〜98年)と直近の2年はAクラス入りを果たしたとはいえ、それ以外はBクラスが指定席だった。見方によっては「疫病神」と見なすことだってできるはずだ。
その一方で、この20年はカープが独自のファンサービスを重ねて、不動の人気を築きあげてきた20年でもある。その苦難の道で、陰となり日向となりチームを支えてきた一人(一匹?)がスラィリーであるのは間違いない。
奇しくも29日のヤクルト戦は、スラィリーの神通力が発揮されやすいロード(神宮球場)での試合だ。バースデー勝利でロード勝率をさらに伸ばし、首位叩きができれば、奇跡の逆転Vもだいぶ現実味を増してくるのではないだろうか。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)