『野球太郎』が楽天の補強ポイントに挙げたのは「即戦力のリリーフ型投手」、「スラッガー」、「高校生内野手」、「守備型の遊撃手&俊足」、「東北地元の選手」だった。「即戦力のリリーフ型投手」から順に指名結果を見ていこう。
抑えの松井裕樹につなぐリリーフ陣を見ると、今季、安定した活躍を見せたのは金刃憲人、福山博之、ミコライオくらい。しかし、3年連続60試合以上で登板した福山は勤続疲労の不安もある。そのため「即戦力のリリーフ型投手」の整備は急務だ。
楽天は今回のドラフトで、4位・菅原秀(大阪体育大)、5位・森原康平(新日鐵住金広畑)を指名。ともにストレートの最速は150キロを超え、セットアッパー的な起用が想定される。「即戦力のリリーフ型投手」の補強を満たしたドラフトになったといえる。
今季の日本人の最多本塁打は島内宏明の9本。本塁打は外国人選手依存の状態が長く続き、楽天の生え抜きスラッガーはなかなか誕生しない。
「スラッガー」候補として、楽天は外野手の田中和基(立教大)を3位で指名。昨秋、田中はリーグ戦10試合で4本塁打。また、今春のリーグ戦から両打ちに戻すと、左右両打席で本塁打を放った。また、50メートル5秒8の俊足、遠投125メートルの強肩と、身体能力も高い。走攻守揃っているだけに、チームの主軸として成長させたい選手だ。
楽手には、左打ちの若い内野手が少ない。
有望な「高校生内野手」を指名したかったが、今回のドラフトでは指名なし。全体で見ても内野手の指名は、育成2位・南要輔(明星大)、3位・向谷拓巳(兵庫ブルーサンダーズ)のみだった。
この点においては、先述した向谷がマッチする。
向谷はまだ19歳と若く、独立リーグのベースボールファーストリーグ(BFL)・兵庫ブルーサンダーズでの2年間で積み上げた盗塁は75個と俊足。この走力は1軍のトップレベルに匹敵すると評価されている。
また、今季は打率.373でリーグ首位打者に輝いた。守備に関しては今季13失策とまだまだ粗さが目立つが、今季からショートに転向した不慣れもあった。伸びしろは十分なだけに期待したい。
楽天といえば東北が地元の選手や、ゆかりのある選手を指名することが多い。2013年のドラフトでは、部員わずか11人の岩出山高のエース・今野龍太を9位で指名した。
今年は育成1位で投手の千葉耕太(花巻東)を指名。190センチの長身右腕で、投手兼外野手として高校通算15本塁打を放った二刀流だ。最速144キロのストレートとフォークが武器で、千葉自身も「直球だけでなく変化球もうまく使える投手を目指したい」と話し、プロでは投手一本で勝負する。
【総合評価】65点
楽天が昨年のドラフトで指名した投手は石橋良太(Honda)のみ。そのためか、今年は投手を大量指名した。だが、全体的に、即戦力というよりも「スケールの大きさ」を優先した指名だったと感じる。
投手は“高校BIG4”の藤平尚真(横浜高=写真)を1位で獲得。まだ底の見えない身体能力抜群の投手だけに期待がかかるが、まずは2軍でしっかり鍛えてからの1軍登板となるだろう。また、安定感にも欠ける部分があるので、でプロに入って大人の投球を身につけられるか。それも課題だ。
即戦力の先発投手として指名されたであろう2位・池田隆英(創価大)はいい球を投げるが、ハートの弱さを不安視する声があるだけに、一皮剥けた投球ができるようになるかが活躍の鍵になる。
6位指名の鶴田圭祐(帝京大準硬式野球部)は準硬式野球部からの指名ではあるが、ストレートとスライダーの評価は高い。素材のよさ、スケールの大きさを生かして、プロに馴染んだら大化けするかもしれない。
野手では田中が1年目からどれだけ打撃でアピールできるか? 身体能力も高いので、将来はセンター・オコエ瑠偉、ライト・田中で「鉄壁の布陣」を敷く夢も広がる。
8位の石原彪(京都翔英高)は強肩強打の捕手。「京都のドカベン」と騒がれた選手で、スカウトからは「西武・森友哉の右打者バージョンみたい」とも評されている。将来は本家ドカベン・山田太郎のような打てる捕手に育つのを期待したい。
今年は思い切って多くの「素材型」を指名した楽天。この結果が吉と出るか凶と出るかは、数年後の順位で明らかになるだろう。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)