■ブレイク劇@
源田壮亮(西武)
まず取り上げたいのはルーキー。今季も目覚ましい活躍を見せたルーキーが多数出現したが、その筆頭がパ・リーグの新人王に輝いた源田壮亮(西武)だ。
愛知学院大からトヨタ自動車を経てドラフト3位で西武に入団。辻発彦新監督に見出され、主に「2番・遊撃」で全143試合に出場した。
入団当初は「守備の人」と目されていたが、その評価に反発するかのように安打を量産。プロ野球新人安打記録で3位となる155安打を放ち、バットでもファンを魅了した。また、リーグ2位の37盗塁を記録するなど積極的な走力でもチームに貢献した。
■ブレイク劇A
京田陽太(中日)
パ・リーグの源田に対し、セ・リーグでは京田陽太(中日)が新人王に輝いた。日本大から2位で入団した京田も遊撃のレギュラーの座をつかみ、源田には一歩及ばなかったものの141試合に出場して149安打。見事な成績でBクラスに低迷するチームに明るい兆しをもたらした。
■ブレイク劇B
濱口遥大(DeNA)
投手では神奈川大から入団した濱口遥大(DeNA)が大卒ドラフト1位の実力を見せつけ、10勝6敗といきなりの2ケタ勝利。開幕から先発ローテーションに定着し、石田健太、今永昇太に続く「大卒即戦力左腕」の流れに乗った。
クライマックスシリーズ、日本シリーズといった大舞台でも1勝ずつを挙げるなど大車輪の働き。ルーキーながらチーム躍進の立役者となった。
■ブレイク劇C
東浜巨(ソフトバンク)
続いては、順調に成長して「チームの顔」になった2選手を取り上げたい。
1人目は東浜巨(ソフトバンク)。2012年のドラフト1位で亜細亜大から入団した大器が、5年目でついに覚醒した。
ルーキーイヤーの2013年から2015年にかけてはトータルで6勝と伸び悩むも2016年は9勝を挙げてブレイクの兆しを見せていた。そして今季は、2ケタの壁を破るどころか16勝(5敗)と突き抜けて最多勝を獲得。パ・リーグの5球団からまんべんなく勝ち星を挙げ、常に他球団にとって脅威となった。
防御率2.64も菊池雄星(西武)、則本昂大(楽天)、千賀滉大(ソフトバンク)に次ぐリーグ4位。来年はさらなる飛躍が期待できそうだ。
■ブレイク劇D
山川穂高(西武)。
もう1人は「おかわり2世」の異名をとる山川穂高(西武)。2013年のドラフト2位で富士大から入団して、今季が4年目。東浜同様に昨季は14本塁打でプチブレイク。今季は誰もが認める長打力が花開いた。
7月末からスタメンに定着したため、出場数は78試合と少なかったが、23本塁打を放って、その名を一躍全国に轟かせる。8月下旬からは不調の「本家おかわり君」中村剛也に代わってチームの4番を任され、世代交代をも印象づけた。
続いては育成枠から這い上がり、大舞台のグラウンドに立ったソフトバンクの2選手に注目したい。
■ブレイク劇E
甲斐拓也(ソフトバンク)
まずは正捕手の座を射止めた甲斐拓也(ソフトバンク)。2010年の育成ドラフト6位(同年のソフトバンクの育成最下位指名)で楊志館高から入団し、2013年に支配下選手登録されたが、昨季までの通算出場数はわずか15試合だった。
しかし、今季は開幕1軍を勝ち取ると、103試合でマスクを被る大躍進。日本一を勝ち取ったチームの正捕手の座を奪っただけでなく、ゴールデン・グラブ賞に輝き、さらにアジア プロ野球チャンピオンシップ2017にも出場。侍ジャパンに選出されるまでに野球人生が激変した。
■ブレイク劇F
石川柊太(ソフトバンク)
投手では、2013年に創価大から育成1位入団した石川柊太が、先発にリリーフに奮闘。先発として12試合に登板して6勝2敗、中継ぎでは22試合に登板して2勝1敗。日本シリーズでは6戦のうち4戦にリリーフ登板するなど、縦横無尽の活躍を見せた。
長き苦節の時をへてようやく日の目を見た選手たちの活躍も胸を熱くさせた。最後にそんな苦労人のブレイク劇も取り上げたい。その苦節ブレイク組の総大将は、もちろん大田泰示(日本ハム)だ。
■ブレイク劇G
大田泰示(日本ハム)
2008年のドラフト1位で東海大相模高から巨人に入団した大田泰示(日本ハム)。松井秀喜(元ヤンキースほか)が背負っていた背番号「55」を与えられるほどの期待株だった。しかし、走攻守ともにケタ外れと誰もが認める才能と抜群の身体能力を生かしきれず、昨オフに日本ハムへ無念のトレード。
すると若手に多くのチャンスを与えるチームカラーが肌に合ったのか、崖っぷちに追い込まれて目が覚めたのか、ようやく覚醒。118試合の出場で初の規定打席に達し、15本塁打、46打点と輝きを放ち始めた。ただ大田の真の力は、まだまだこんなもんじゃない。10年目となる来季はさらなる飛躍を遂げ、北海道でのびのびと活躍してほしい。
■ブレイク劇H
秋山拓巳(阪神)
阪神では2人の苦労人投手が日の目を見た。先発で初の2ケタ勝利を達成した秋山拓巳は、2009年のドラフト4位で西条高から入団。高卒ながらルーキーイヤーに4勝を挙げたが、その後の6年は2勝止まりと鳴かず飛ばず……。
昨オフには入団以来の背番号「27」を剥奪され「46」に変更。「もう後がない」と覚悟して望んだ今季は25試合に先発して12勝6敗、防御率.2.99。人が変わったように白星を量産した。投球回159回1/3で与四球16と制球力も光った。ようやく勝つためのコツをつかんだようだ。
■ブレイク劇I
桑原謙太朗(阪神)
阪神の中継ぎでは横浜(現DeNA)、オリックスを渡り歩いてきた桑原謙太朗がブレイク。2007年の大学生・社会人ドラフト3巡目で横浜に入団。横浜では3年間で4勝。オリックスでは登板機会に恵まれず、阪神1年目の昨季も6登板。秋山と同じく後がないところまで追いつめられていた。
しかし、今季は67試合に登板して39ホールド。強力な阪神リリーフ陣において継投のキーマンとなるブレイク劇を見せた。9年目にしてようやく幕を開けたプロ野球人生。檜舞台が続くよう2年連続の活躍を期待したい。
今季躍進を遂げた選手は、ほかにも美馬学(楽天)、山岡泰輔(オリックス)、宮崎敏郎(DeNA)、外崎修汰(西武)など、まだまだ名が挙がる。
新たに台頭する選手が多かったということは、今季はプロ野球界の転機だったのかもしれない。その答えがわかるのは数年後だが、今季の彼らを見ているとそんな思いが湧いてくる。
来週はどんな「10大ニュース」が飛び出すのか。乞うご期待!
文=森田真悟(もりた・しんご)