スアレスはベネズエラ出身の25歳。2015年はメキシカンリーグに所属し、中継ぎで43試合に登板。5勝0敗、防御率1.71の好成績を残して、昨秋、テスト入団でソフトバンク入りした。
実はスアレスのプロ野球キャリアは、メキシコでの1年のみ。それ以前はアマチュア選手だったという。アマだから当然ながら野球では飯が食えず、運転手や建築現場の作業員などをして、生計を立てていたというからビックリ。
ソフトバンクはその将来性を期待しての獲得だった。しかしキャンプ中に剛速球を次々投げ込むスアレスに、佐藤義則投手コーチは「投手陣のなかでもナンバーワン」と絶賛。その期待通り、ウエスタン・リーグでは8試合に登板して2勝1敗4セーブと活躍。エディソン・バリオスの不調もあり、4月9日に1軍昇格となった。
1軍デビュー戦では1イニング無失点でヒーローインタビューに立ったスアレス。その次のゲーム(4月12日、対西武戦)では、3点リードの8回に登板しプロ入り初ホールドを記録した。
ただし、この試合では先頭の中村剛也を四球で歩かせ、続くエルネスト・メヒアのヒット性の当たりは今宮健太の好守で併殺。続く栗山巧にヒットを打たれ、森友哉をレフトフライに打ち取り、なんとか抑えた印象。デビュー戦の2奪三振ほどのインパクトは感じられず、正直不満な内容ではあった。
もともと粗削りだが、将来性に賭けて獲得した投手。ソフトバンクの中継ぎ陣も、徐々に調子を上げてくるなか、どこまで快投を続けるか、見守っていきたい。
アマチュア時代の運転手や建築現場作業員から、夢のジャパニーズ・ドリームを掴むことができるか。「スアレス伝説」の始まりに期待したい。
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住。ライター、イベント関連など、スポーツ関連の仕事を精力的にこなしている。北海道生まれなのに、ホークスファン歴約40年。99年ダイエー初Vを福岡ドームで観戦するなど、全国を飛び回りながら、1軍2軍問わずプロ野球を追いかけている。