選手登場曲で真っ先に思い出されるのが、巨人時代の清原和博。長渕剛の「とんぼ」を登場曲として使い、音楽が止まった後もライトスタンドの巨人ファンが合唱するのは東京ドームの風物詩的光景だった。
現在、巨人で盛り上がる選手登場曲といえば坂本勇人が使用するGReeeeNの「キセキ」が挙げられる。高校野球を舞台にしたドラマ『ROOKIES』の主題歌として有名な曲だ。中島宏之(オリックス)も西武時代から登場曲に使っているが、今や「キセキ=坂本」のイメージが強い。
また、西武にも登場曲に合わせて盛り上がる歴史がある。かつては小関竜也の「太陽にほえろ! 青春のテーマ」や片岡易之(現巨人、登録名:片岡治大)の「ultra soul」(B'z)がその代表例で、今は秋山翔吾の「人にやさしく」(THE BLUE HEARTS)に受け継がれている。
西武ではほかにも、高山久が地元・所沢の「所沢音頭」を登場曲に使いファンの心をガッと掴んでいた。
選手のなかには自分の名前にあやかった登場曲を使う選手もいる。代表的なのは阪神・大和の「宇宙戦艦ヤマト」だろう。ベタな選曲かもしれないが、そのストレートさが重厚な甲子園球場の雰囲気とマッチしている。
今季のルーキーで話題となったのはロッテのドラフト1位・佐々木千隼。名前の千隼(ちはや)にちなんで、映画『ちはやふる』の主題歌・Perfumeの「FLASH」が使われるのではと目されていた。
しかし、プロ初先発となった4月6日、本拠地・ZOZOマリンスタジアムでマウンドに向かう際に流れたのはSMAPの「オレンジ」だった。この選曲についてはロッテのエース・涌井秀章の提案だったと言われている。それでも試合後のヒーローインタビューの際、お立ち台に向かう時に流れていたのは「FLASH」だった。
先輩選手がウケ狙いで……という選曲では、森友哉(西武)の「夢がMORIMORI」(森口博子)が挙げられる。プロ2年目の2015年のシーズン中、チームの先輩たちの提案で使われるようになった。
この曲は1990年代、まだブレイク前のSMAPも出演していた同名のバラエティー番組のテーマソングだったもの。森にとっては生まれる前の曲だった。
ソフトバンクでは、松田宣浩が勝手にチームメートの登場曲を変更して流すことがしばしばある。最近では平沢大河(ロッテ)の登場曲が急遽「タイガーマスク」に差し替えられたこともあった。
「リーグのお荷物」と言われていたクリーブランド・インディアンズの快進撃を描いた1989年公開の映画『メジャーリーグ』。この映画で最も盛り上がる場面といえばチャーリー・シーン演じるインディアンズのクローザー、リック・ボーンが登場曲「ワイルド・シング」が流れる中マウンドへ向かうシーンだ。
現在のプロ野球でこの熱狂シーンを思い起こさせるのは、山崎康晃(DeNA)が登板する時だろう。
横浜スタジアムでDeNAがリードする展開の9回表、クローザーの山崎がリリーフカーで現れるとKernkraft400の「Zombie Nation」が場内に流れる。するとベイスターズファンが立ち上がり、音楽に合わせてジャンプしながら「ヤ、ス、ア、キ!」と声を挙げる。
この「康晃ジャンプ」は、昨年のオールスターゲームで一躍他球団にも浸透。今や横浜スタジアムの風物詩として有名になっている。
そして、同様の盛り上がりを思い起こさせるものとしては、藤川球児(阪神)の「every little thing every precious thing」(LINDBERG)も忘れてはならない。曲に合わせてメガホンを振り、ファンも一緒に歌うのは甲子園球場ではおなじみの光景だ。
文=武山智史(たけやま・さとし)