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金本監督との不思議な縁……。 阪神ドラフト6位・板山祐太郎が、レギュラーをつかむためには?


「ルーキーは高山だけじゃない!」

 阪神タイガース・板山祐太郎(写真は亜細亜大学時代)が、プロ入りして初めてのヒーローインタビューで、甲子園球場のファンに向けて思わず叫んだ。

 高山俊と板山は同期入団で年齢も同じ、ポジションはともに外野手で右投げ左打ちと共通点は多い。しかし、高山がドラフト1位指名なのに対し、板山は6位指名選手、この順位差もあり、板山は高山のことを事あるごとに意識してきた。

「ボクのことも忘れないでください」

 22歳の若者が抱く純粋な気持ちがここには込められている。ただ、今年のタイガースにおいては、これだけは言える。

「ライバルは高山だけじゃない!」

「アスリート」が結んだ縁


 昨年のドラフト会議、阪神は当初5位で指名を打ち切る予定だったという。

「もう1人指名しておきたい選手がいる。」

 金本知憲監督がスカウトにお願いして6番目に指名したのが板山だった。

 金本監督は、広島を本拠地とするトレーニングクラブ「アスリート」の代表・平岡洋二氏から、板山の情報を入手していたのだ。

「アスリート」と言えば、金本監督が現役のころから、鉄人と呼ばれるまで徹底的に自らの体を鍛え上げたジムだ。この「アスリート」で板山がトレーニングしているところを、平岡氏が目をつけていたのだ。

 もちろん、他球団も板山を注視していなかったわけではない。亜細亜大で東都大学リーグのベストナインを3度獲得、強肩で守備範囲も広く、三拍子揃ったまさに“アスリートタイプ”の選手として注目していた。


ヒッチするクセよりも並外れた身体能力にかける


 しかし、最終的には他球団は板山の指名を見送った。その最大の理由は、板山が打撃のときに見せるクセにあったという。

 構えたときに、ピッチャーの投球にタイミングを合わせるために、グリップを上下させる、いわゆる“ヒッチ” するクセがあったのだ。ヒッチすると、プロの投げるストレートにはどうしても差し込まれてしまう。外国人選手が日本に来て、ヒッチすることで結果を残せずに帰国する例をスカウトたちは嫌というほど知っていた。

 だが、金本監督はあえて指名に踏み切った。板山の持つ並外れた身体能力にかけたのだ。

 ヒッチするクセは、後に掛布雅之2軍監督が、板山に下半身でタイミングを取らせることで、劇的に改善されたため、今はほとんどヒッチすることはなくなった。

ポジション争いを制し、レギュラーをつかむために


 今年のタイガースの外野のポジション争いは熾烈だ。5月12日までに、公式戦で外野を守った選手は実に9名を数える。

 チャンスは与えられる。しかし結果が出なければ、ファームへの降格も早い。

「技術のない奴は工夫しろ!」

 開幕から若手野手を積極的に起用してきたものの、金本監督の打てない打線に対するイライラがこの言葉によく現れている。

 板山が金本監督の期待に応え、レギュラーの座をつかむには、ライバルたちに勝つというより、優れた身体能力を生かして、まずは自分との戦いに勝つことが先決なのかもしれない。

 そして、レベルアップした選手が競争してこそ、チームは強くなっていくのだ。


文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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