新型コロナウイルスの影響を考慮し、開幕が遅れているプロ野球。世界的な広がりを見せているだけに、これも仕方ないところか。開幕戦に関するトピックに触れつつ、来たるべき日を待ちたい。
勝っても1勝、負けても1敗。開幕戦の勝敗がペナントレースに及ぼす影響は、あくまでも「143試合のうちの1試合」。ただ、開幕戦で先発を託される投手は、やはり特別な存在。歴代の開幕投手回数上位は以下のとおりだ。
■開幕投手回数ベスト5(1950年2リーグ制以降)
1位:金田正一(元国鉄ほか)14回
1位:鈴木啓示(元近鉄)14回
3位:村田兆治(元ロッテ)13回
4位:山田久志(元阪急)12回
5位:東尾修(元西武ほか)10回
この全員が200勝以上を記録。開幕戦を何度も任されるような投手は、チームの、いや球界の顔のような存在ばかりなのだ。
なお、他に開幕投手記録としては、山田久志(元阪急)の12年連続開幕投手、斎藤雅樹(元巨人)の3年連続開幕戦完封勝利、などが目立つところ。
ちなみに現役では、今季から楽天の所属となった涌井秀章の9回が最多だが、昨年までに8回経験している石川雅規(ヤクルト)は、すでに今季の開幕投手として発表されており、実現すれば涌井と並ぶ現役トップタイの9回となる。
昨年の開幕戦で中田翔(日本ハム)が3対3の同点で迎えた延長10回裏1死満塁から、レフトスタンドに劇的なサヨナラ満塁ホームランを放った。
先頭の中島卓也が二塁打、淺間大基が送りバントを決めると、対戦相手のオリックスベンチは西川遥輝、近藤健介の2者を申告敬遠で満塁策をとる。
この状況で燃えない4番打者はいないだろう。しかも、その出番までの4打席はいずれも凡退。余計に気持ちが入ったはずだ。まさに中田の意地がスタンドまでボールを運んだ一打だった。
記録に関する部分を付け加えると、開幕戦での満塁本塁打としては22本目、開幕戦でのサヨナラ本塁打としては12本目。この両方を兼ねるサヨナラ満塁本塁打となると、1994年の伊東勤(元西武)、2005年のアレックス(元中日)に続く3本目。さらに延長でのサヨナラグランドスラムは史上初の快挙だった。
サヨナラ本塁打は、その一発でゲームセットとなるが、逆に、1回表の1番打者が、1球目をスタンドに叩き込む「開幕戦初回先頭打者初球本塁打」も2本生まれている。
1本目は1962年、阪急対南海の試合で、阪急の衆樹資宏が、スタンカの投じた初球をとらえてホームラン。
2本目は2007年の巨人対横浜戦で、巨人の高橋由伸が三浦大輔の1球目をライトスタンドに放り込んでいる。
なお、衆樹は神奈川県出身で湘南高から、高橋は千葉県出身で神奈川の桐蔭学園高から、いずれも慶應義塾大を卒業してプロ入りという共通点がある。
文=藤山剣(ふじやま・けん)