黒瀬健太 くろせ・けんた
初芝橋本3年/捕手
右投右打・183cm95kg
通算97本塁打、今年のドラフト候補の中では一番の飛ばし屋だ。甲子園まで辿りつき、さらに日本代表に名を連ねてでもいれば、歴代記録の107本を更新の可能性もあった。
しかし、春の大会直前に右肩を痛めすべてが狂った。捕手としては故障前からプロでバリバリ……というレベルではないと見ていたが、夏は山なりの二塁送球しかできず。打席に影響はなかったと言うが、これが主将でもあり、責任感の塊のような男に一層の力みを生んだことはあったはず。スムーズにバットが出なかった。
和歌山大会の初戦で優勝校の一角、日高中津分校を延長13回の激闘で下すも、次戦で田辺工に完封負け。4番・黒瀬は1発どころか、2試合連続ノーヒットで夏を終えた。
春の時点で下降気味だったスカウトの評価がさらに落ちたことは間違いない。元々、乗り気でなかったセリーグ各球団のリストからはおそらく外れただろう。ただ、飛ばす力は中田翔(日本ハム)や中村剛也(西武)の高校時代にも引けをとらない。技術面での課題はいくつも抱え、現状では「0か100」のタイプも、数年後の「100」に賭ける価値は十分。
寺島成輝 てらしま・なるき
履正社2年/投手
左投左打・182cm87kg
全国レベルで沸きに沸いた大阪桐蔭との初戦対決に先発。昨春、センバツ準Vの原動力となった先輩の永谷暢章、溝田悠人を差し置いての起用というより、昨秋の時点から主戦は当時1年生の寺島になっていた。2人がセンバツ以降、調子を落としたこともあったが、何より寺島の素材と安定感が上回っていた。
見るたびに体も成長し、ストレートは140キロ台に乗り、変化球はスライダーに三振を奪えるフォーク。大型左腕にして制球の乱れが少ないところも大きな長所だ。チームを見るトレーナーが感心していたのは「寺島はいま自分の体がどうなっているか、腕がどこを通って振られているのか、そういうことを感じられる」ということだった。つまり、身体感覚に優れている、と。だからフォームが安定し、試合の中で微調整もできる。
桐蔭戦は完投するも5失点(7安打、7三振)で敗れた。しかし、3回に許した2点は内野のタイムリーエラーで最後の2点は9回に力尽きてのもの。あのエラーがなければ逆の結果になっていた可能性も十分あった。それでも2年夏の段階で、この悔しさと舞台を経験できたことは何より。秋から来年にかけて追いかけないわけにはいかない。桐蔭戦で3安打の打撃センスもなかなか。
☆その他の評価上昇選手☆
斎藤祐太 さいとう・ゆうた
智辯和歌山3年/投手
左投左打・176cm72kg
◎春までと別人。全球種のキレが格段にアップ。体の使い方を理解した
吉田大喜 よしだ・だいき
大冠3年/投手
右投右打・175cm74kg
◎冬を越し6キロ増で最速も146キロに。左右問わず内攻めも得意で夏4強
春野航輝 はるの・こうき
智辯和歌山3年/一塁手
右投右打・184cm98kg
◎本人は中田翔好きも大道典良になる可能性もチラリ。意外に泥臭い
山本龍河 やまもと・りゅうが
智辯和歌山3年/右翼手
右投左打・183cm83kg
◎豪快な振りは柳田的な魅力。進学希望と聞くがプロ選択でも面白かったはず
吉中勇人 よしなか・はやと
和歌山商3年/投手
左投左打・178cm75kg
◎準決勝まで23回で29K無失点。タテスラ、抜きカーブ武器も進路未定
青柳昴樹 あおやぎ・こうき
大阪桐蔭3年/中堅手
右投右打・182cm82kg
◎春から停滞のまま夏を終えるも潜在能力と桐蔭卒への信頼で指名濃厚
根来祥汰 ねごろ・しょうた
滝川二3年/中堅手
右投左打・174cm67kg
◎50メートル5秒8。走り出しからとにかく速く、先々足職人になれる器
光田悠哉 みつだ・ゆうや
大阪偕星学園3年/投手
左投左打・177cm65kg
◎低めに球を集め安定感抜群。使いべりしないタイプで即プロの可能性を探る
■ライター・プロフィール
谷上史朗(たにがみ・しろう)/1969年生まれ、大阪府出身。関西を拠点とするライター。田中将大(楽天)、T−岡田(オリックス)、中田翔(日本ハム)、前田健太(広島)など高校時代から(田中は中学時代から)その才能に惚れ込み、取材を重ねていた。近著に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)がある。