春季関東大会の準々決勝、早稲田実は昨夏の甲子園優勝校・作新学院と相対した。
大会きっての好カードと目されたこの試合で、清宮は「打った瞬間にそれとわかる」大きな一発(高校通算95号)を放つも、早稲田実は4対8で敗退。作新学院に軍配が上がった。
ちなみに、このホームランボールはひたちなか市民球場の裏手にある森へと消えていったが、観戦者の捜索により発見。係員を通して清宮へ手渡された。
関東大会の敗戦から約1週間後、早稲田実は沖縄県高校野球連盟による招待試合に参加。早稲田実対春季沖縄県大会ベスト4のチームという形で4試合が組まれた。
清宮は3試合目の美来工科戦で高校通算96号を放ったが、試合は5対7で美来工科に敗れた。なお、本塁打が出なかった1、2戦目は早稲田実が勝利。本塁打が勝利に結びつかない、もどかしい展開で沖縄遠征を終えた(4試合目は雨天中止)。
チームの結果が出るに越したことはないが、現時点では打撃好調ならばOKか。夏に向けて自身の調子を維持しながら、主将として、課題の投手陣も含めたチームの状態を上向きにしていきたい。
先週の当連載で、「清宮、『逃げ恥』超え!?」という話題を取り上げた。
RKK招待高校野球大会での早稲田実対秀岳館戦を、RKK(熊本放送)がライブ配信したところ、同局史上最多の2万8000回の視聴数を記録。それまでの最多視聴数だったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の関連映像の記録を超えたというものだ。
「何とかして清宮を見たい」という高校野球ファンは全国にいる。そこで、再びインターネットテレビ局が動くことに。6月3、4日に行われる愛知での招待試合(4試合)が「AbemaTV」で中継されることになったのだ。
早稲田実と対戦するのは中京大中京、桜丘、至学館、享栄。野球どころ愛知の強豪が揃った。あと3本に迫る節目の100号本塁打が、この招待試合中に飛び出す可能性もある。全国からの視線が愛知で戦う清宮に注がれることだろう。
清宮が本塁打を打つたびに脚光を浴びるのが、高校通算本塁打ランキング1位の107本。
この記録を打ち立てたのは山本大貴さん(元神港学園)。高校卒業後に進んだ社会人野球のJR西日本を昨年限りで引退し、今はJR西日本の駅員として働いている。
2位の黒瀬健太(初芝橋本→ソフトバンク)に11本の大差をつけているので、自身の記録が抜かれる日がくるとは思っていなかったかもしれない。
しかし、最近の山本さんのインタビューを読むと、プロ野球を背負って立つ男と期待せれる清宮に追い越されるのは本望といった心情を述べた。
早稲田実で清宮と3、4番コンビを組む野村大樹(2年)は、大谷翔平(日本ハム)もビックリの「三刀流」(?)。
沖縄での招待試合では、1試合目に捕手でフル出場。2試合目に三塁からのリリーフ投手と重要なポジションを次々とこなした。
投手としては、最速135キロのストレートにスライダー、カーブ、スプリットなども操る。「投手・野村」がものになれば、チーム力の底上げがなされ、来年につながる。その行方を楽しみに追いたい。
夏の西東京大会で、早稲田実の最大のライバルと目されている日大三。
昨秋の東京大会決勝で清宮から5三振を奪った左腕・櫻井周斗(3年)と、パワーあふれる打棒が売りの主砲・金成麗生(3年)のコンビが注目だが、夏を勝ち抜く秘策として金成の投手再転向プランを立ち上げた。
元々は投手だったが、打撃を優先するため一塁へコンバートされた金成。しかし、関東大会の準々決勝・霞ヶ浦戦で公式戦初先発。いきなり150キロを繰り出した。
「成長しているのは清宮だけじゃない」と言わんばかりの投げっぷりに、スカウトもド肝を抜かれ、「大谷翔平級」の声も挙がった。課題の制球力を改善させれば、夏も「投手・金成」の出番はあるか?
春季関東大会は浦和学院が東海大相模を3対2で下して優勝を決めた。
浦和学院で注目したいのは「ウラガクの大魔神」こと佐野涼弥(2年)。投手としては8、9回をきっちりと0点で締めてクローザー役を全うし、打者としては終盤の満塁のチャンスで勝ち越し投犠打を決めるなど、投打できっちりと仕事をこなした。
ただ、抑えはあくまで今大会までの暫定的なもの。浦和学院の森士監督は先発として期待しているようだ。
夏まで考えると時間は短いが、まだ2年生。来年をも見据えた取り組みに期待したい。
一挙手一投足が注目される清宮。本塁打を打たなくてもニュースになるが、順調に本塁打を積み上げながら、話題を提供しているのだから恐れ入る。
ニュースで目耳にする度に、その立ち振る舞いも高校生離れしていると再認識させられる。高校球界では押しも押されぬレジェンドクラスだ。
夏までにどれだけの清宮ニュースがメディアで踊るのか。こうなったらミーハー気分で思いっきり楽しみたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)