秋季リーグも残すところあとわずか。史上初の7連覇に挑む亜細亜大を阻止するのは…?
東都大学野球リーグも終盤を迎えた。未消化試合もあるため優勝、最下位ともに行方はまだ見えない。
そんな中、行われた第6週、亜細亜大vs駒澤大のカード。亜細亜大は開幕カードを落としたものの、その後は連続で勝ち点を奪い、優勝戦線に残っていた。一方の駒澤大は、まだ勝ち点を落としておらず、優勝候補の最筆頭。駒澤大以外のチームは勝ち点を1つ以上落としているため、亜細亜大としては何とか土をつけたいという思いであり、駒澤大は今後を優位に進めるためにも絶対に落とせない対戦カードとなった。
●信頼を取り戻したエースと不動のエース対決
第1戦目、亜細亜大の先発は開幕戦以来となる初戦のマウンドを任された山?康晃(4年・帝京高)。駒澤大は不動のエース、今永昇平(3年・北筑高)。
試合は初回から動いた。1回表、亜細亜大、先頭打者の藤岡裕大(3年・岡山理大付高)がライトへホームランを放って1点を先制。さらに四球、ヒットで1死一、三塁とし、続く打者はゴロを打つが、これを三塁手が弾き、併殺崩れとなって追加点を奪う。
対して山?は危なげないピッチングで毎回三振を奪っていく展開。
3回には亜細亜大が押し出しの死球で3点目。毎回、得点圏に走者を置くなど、亜細亜大のペースで試合は進んでいった。そして今永は5回で降板。後を受けた東野龍二(1年・履正社高)がこの試合初めて、三者凡退に抑えたが、3番手の中山大貴(1年・市川越高)が8回、9回に失点を喫して、5−0で亜細亜大が先勝した。
山?は散発3安打完封、先発全員奪三振となる15個の三振を奪う快投を見せた。
▲3安打完封の快投で通算16勝目を挙げた山?
翌日は亜細亜大が嘉陽宗一郎(1年・松山聖陵高)、駒澤大は片山雄貴(3年・福岡工大城東高)がそれぞれ先発マウンドを託された。
この日も試合の口火を切ったのは藤岡。2試合連続となる先頭打者ホームランで亜細亜大が先制。だがその直後、駒大打線が嘉陽に襲い掛かる。
▲2試合連続先頭打者HRの藤岡(左)。今永もひときわ警戒をしていた選手だ
2死一、三塁として前田滉平(3年・京都外大西高)がタイムリーを放って同点とすると、さらに四球を与えて満塁。ここで亜細亜大は嘉陽を諦めてサウスポーの落合祐介(4年・駒大苫小牧高)をマウンドへ送る。打席には右のスラッガー・江越大賀(4年・海星高)。この江越が走者一掃となるタイムリー三塁打を放ってこの回、一挙4点を奪った。
しかし、亜細亜大もくらいつく。2回、この回先頭の遠藤雅洋(3年・聖光学院高)がソロホームランを打って1点差。1死後、今度は板山祐太郎(3年・成立学園高)にもホームランが出て1点差に。
この一発攻勢に亜細亜大ベンチ、スタンドは一気に湧きあがった。さらに2死走者なしから3連打で1点を奪って同点に。あっという間の猛攻に、今後の行方は一体どうなるのかと案じた。
だが、その後はともに落ち着きを見せる。3回から駒澤大は2番手の東野が、亜細亜大は3番手の大下佑馬(4年・崇徳高)が救援。前日、2回を無失点に抑えた東野の前に、走者を出してもあと一本が出ず、なかなか亜細亜大に流れが傾かない。
対して駒澤大は5回、江越の二塁打を足がかりに1点を勝ち越し、6回にはエラーでリードを広げた。
ロングリリーフとなった東野は淡々とピッチングを続け、2点のリードを保ったまま9回のマウンドも託された。3番から始まる嫌な打順だったが、三者凡退に抑えて勝利。自身最長イニングながら無失点の好投で大学初勝利を挙げた。
▲大学初勝利をマークした東野。1年生らしからぬ落ち着いた投球が光る
●どちらも負けられない3戦目。エース対決の行方は……
第3戦目は1戦目と同じく、山?と今永の投げ合いで幕を開けた。
今永は初回、2死走者なしからヒット、四球で出塁を許すと、池知佑也(4年・高知高)にタイムリーを打たれて1点を失うが、三塁を狙った一塁走者を刺してチェンジ。最少失点で切り抜けた。
その裏、駒澤大は簡単に2死を奪われるが、山?はボールが先行する立ち上がりだった。2者連続四球を選び、バッターは齋藤導久(4年・愛知高)。齋藤の打球はライトへ上がり、いったんグラブに収めたように見えたが、ボールはグラウンドを転々とする。その間に2人の走者は一気にホームへ生還し、齋藤も三塁へ滑り込んだ。
▲逆転となる2点タイムリー三塁打を放った齋藤
3回にも1点を追加し、3−1で迎えた4回。駒澤大は1死一、三塁のピンチを招くと、打者をボテボテのゴロに打ち取る。しかし、三塁手は二塁に送球するがセーフ、さらに一塁へ送られるが、これを捕球できずにオールセーフ。1点差に詰め寄られ、なおも1死一、三塁。
ふと今春の出来事が頭をよぎった。
亜細亜大vs駒澤大の1回戦、駒澤大が1点リードして迎えた9回の亜細亜大の攻撃。スクイズを試みたが空振りとなるものの捕逸で同点にされ、さらに広がったピンチではライトフライと思われた飛球を落球(記録は二塁打)して勝ち越しされた場面だ。
そんなプレーを思い出している間に、亜細亜大はスクイズで同点に追いつく執念を見せた。相手のミスを逃さずに、付け込んでくるのはさすが亜細亜大。他大の複数の選手が彼らの強みとして挙げていた部分でもある。
同点で迎えた5回、駒澤大は先頭の前田がヒットで出塁すると、次打者の初球に盗塁を決めた。そして外野フライにタッチアップして三塁をおとしいれると、続く江越のサードゴロの間に勝ち越しのホームを踏んだ。
援護を受けた今永は危なげのない投球で6回、7回を3人ずつで抑えるが、8回にまたも味方のエラーでピンチを背負ってしまう。
1死から打ち上げられた飛球は平凡なセンターフライに見えた。だが遊撃手が打球を追い続け、センターを守る江越が捕球体制に入れない。
どちらが捕るのだろうか――と見ていると、遊撃手が追うのをやめ、慌てて江越が膝に近い位置でグラブを上向きに差し出すが、落としてしまった(記録はセンターエラー)。打者走者は二塁に到達し、1死二塁と同点のピンチ。
先ほどと同じく春のあの場面が再び頭に浮かんだ。
だがそこはエースの意地だった。次打者に死球を与えてしまったが、内野ゴロ2つで見事に切り抜けた。
そして最終回、今永は三者連続三振でこの試合を締め、4−3で駒澤大が勝利。勝ち点を3とした。
▲完投勝利にガッツポーズを見せる今永
駒澤大は残すところあと1カードと、未消化分の1試合。昨春、あと1勝でリーグ優勝と王手をかけながら目前で逃した経験がある。あのときの思いを晴らすためにも、まずは目の前の一戦一戦だけを見据えて戦っていきたい。
☆☆試合後の今永
「1戦目は自分がふがいない、情けないピッチングをしてしまった。昨日、野手の方、片山、東野が繋いでくれたので、みんなの意思をくみ取って投げられた。1戦目とは違う自分を見せようと思った。8回は亜細亜も『行ける!』という雰囲気になったと思う。そういう雰囲気を変えられるのは自分だけ。それが9回の三振という結果になったと思う。
監督もおっしゃっていたが『優勝』を口にしてはいけないと思う。亜細亜は6回優勝しているが、自分たちはまだない。今から未知の世界に行くので、浮足立たず、自分の仕事は目の前のバッターを打ち取っていくこと。『勝って兜の緒を締めよ』ではないが、優勝戦線にはいるがまだまだ優勝できる力はないと思うので、できることをやっていきたいです」
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。
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