今シーズン、超変革を勝利へ結びつけることができなかったタイガース。
ただ唯一、今までにない阪神の姿を印象づけたのは、若手を中心にファームで目立った選手を1軍で積極的に起用した点だろう。
掛布雅之2軍監督の推薦する選手を1軍登録させると、間髪を入れず、調子のいい状態のまま1軍の試合でチャンスを与えた。
ちなみに9月14日時点で、1軍登録がされなかった選手は、支配下登録70人のうちわずか11人、ここまで59人の選手が1軍の試合に出場したことになる。
以前あれば、1軍に昇格しても試合に出ることなくベンチウオーマーとして数試合を過ごし、そのままファームへ逆戻りというパターンも決して少なくはなかった。
もちろん、1軍に上がる選手が増えるということは、逆に少ないチャンスを生かす必要があるわけで、選手には過度なプレッシャーがかかる。
このプレッシャーをはねのけ、育成枠から支配下登録された後、即1軍の試合に出場。しっかり結果を残した原口文仁は、超変革がもたらした成果ともいえる。
毎試合のようにスターティングメンバーを入れ替え、打順をシャッフルし、ポジションも変動させるスタンスを守り通したことも、超変革へのステップであったと見ることもできる。
ただ、こうした定まらない選手起用については、シーズン中から異論を唱える人たちもいた。慣れないポジションにつかせる複数ポジション制が守備の乱れを誘い、試合を落としたことが1度や2度ではなかったからだ。
これも「超変革元年!」としてとらえるなら、試用期間としての選手起用と割り切ることはできよう。
鳥谷敬を結果的にサードに押しのけ、ショートのポジションを奪い取った北條史也は、超変革の階段をステップアップした好例だ。
また、入団当初から期待通りの活躍を見せた高山俊は、最近ではセンターを守ることが多い。来シーズンを見据えて、打撃だけでなく、守備でも中心選手として活躍することへの期待が高まっている。
複数ポジションを経験させ、いまだ守備は未熟な点を抱えながらも、結果的に高山、北條、原口をセンターラインに配置する守備隊形は、この3人が将来の阪神を担う逸材であり、その期待度の高さを示すものでもある。
今シーズン、ルーキーイヤーとしては十分な結果を残した高山、北條、原口以外にも、来シーズン以降に期待が持てる選手は例年になく多い。
少なくとも外野手では、江越大賀、横田慎太郎、板山祐太郎、中谷将大、伊藤隼太、緒方凌介など、まだまだ伸びシロが期待できる選手たちが揃っている。
今年はFA市場でもオリックス・糸井嘉男をはじめ、多くの外野手がFA宣言するといわれている。
超変革とはいえ、人気球団ゆえに監督就任1年目以上に、勝つことが至上命題とされる来シーズンの阪神。例年通り、FA市場から即戦力の選手を獲得し強化を図るのか。それとも、もう1年じっくり育成し理想の布陣に近づけていくのか。阪神のチーム方針がこのオフ試されることになる。
1年間、ベンチで耐えることが多かった金本監督。
来シーズンは周りにまどわされず、当初の「超変革!」を貫いてこそ、今年の忍耐がはじめて生きてくるはずだ。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。