「夏と野球」と聞くと高校野球が連想されるが、熱さではプロ野球だって負けてはいない。後半戦の戦いのなかで優勝、CS進出、タイトルをかけた争いが激しさを増し、ペナントレースが日に日に盛り上がるからだ。
そんな夏場の真剣勝負だからこそ生まれるドラマがある。今回は「プロ野球夏物語」の後編をお届け。
前編では8月に本塁打を量産する「夏男」としてバレンティン(ヤクルト)を取り上げたが、後編では筒香嘉智(DeNA)をクローズアップしたい。2016年7月、2017年8月と2年連続で夏場に月間MVPを獲得しているからだ。
気になる成績を見ると、実のところ2016年は7月に打率.429、16本塁打、31打点という錚々たる成績を残した反動か、8月は振るわなかった。
しかし2017年になると、月間MVPを獲得した8月だけでなく7月もしっかりとした働きぶりを見せている。
■2017年夏の筒香嘉智の成績
7月:打率.312/5本塁打/18打点
8月:打率.315/7本塁打/23打点
今季も7月時点で打率3割を維持していることから、8月も大いに期待できる。筒香は紛うことなき「夏男」の仲間入りを果たしたといえるだろう。
連日の猛暑が当たり前となった近年だが、プロ野球界でも振り返ってみると、どう考えても夏のせいにしたくなる珍事件がある。
2017年8月11日の広島対巨人では、お盆の交通渋滞に巻き込まれて巨人の選手の荷物が届かなかったため、試合開始が30分遅れるという珍事が起こった。
また、2014年8月16日に行われた西武対日本ハムは、5時間48分をかけて延長12回引き分けという展開に。これだけなら「激闘」で片づけられるのだが、翌日も5時間14分で同じく延長12回引き分け……。暑さゆえに集中力が途切れそうだったのだろうか。ここまでくると偶然では片づけられない、夏の暑さによる見えざる力が働いているのでは? という疑念を禁じ得ない。
ちなみに5時間ゲームというだけでは長時間試合のランキングには入らないが、2試合連続5時間超えはプロ野球史上初の出来事だった。
プロ野球の夏の祭典と言えばオールスターゲーム。今年は京セラドーム大阪とリブワーク藤崎台球場で行われ、選手もファンも年に1度の宴を楽しんだ。そんなオールスターの歴史を振り返ってみると目を疑いたくなる記録が飛び出してきた。
それは、1試合あたりの両軍合わせての最多本塁打記録。1979年7月24日の神宮球場での試合と1987年7月28日の甲子園での試合で、両軍合わせて8本のアーチが乱れ飛んでいる。
ちなみに1979年は王貞治(巨人)、山本浩二(広島)が2本塁打、白仁天(ロッテ)、レオン・リー(ロッテ)、有藤通世(ロッテ)、柏原純一(日本ハム)が1本塁打で都合8本。
1987年は村上隆行(近鉄)が2本塁打、清原和博(西武)、デービス(近鉄)、石嶺和彦(阪急)、小早川毅彦(広島)、バース(阪神)、衣笠祥雄(広島)が各1本塁打で8本となっている。
夏場に強い選手や夏の珍事などを取り上げた「プロ野球夏物語」は、いかがだっただろうか。
筆者は前編で紹介した「夏のサウナ的メットライフドーム」がツボである。西武は筆者のひいきチームだが、夏場の観戦となると仲間にはなかなか声をかけにくい……。
理由はもちろん「暑さ」のため。とは言っても、それこそがメットライフドームの愛すべき個性でもあるので、このままの姿でいてほしいという思いもある。
優勝争いへ向けた正念場に差し掛かる夏に起こる珍事も「風物詩」の一つとして楽しみながら、プロ野球ウォッチングを続けていこう。
文=森田真悟(もりた・しんご)