『野球太郎』がソフトバンクの補強ポイントに挙げたのは「投手層をさらに厚く」、「リリーフタイプ左腕」、「若手捕手の育成・競争」、「右打ち外野手」、「打力重視の野手」だった。
今年一番いい選手・田中正義(創価大=写真)の指名がドンピシャだった「投手層をさらに厚く」から順に指名結果を見ていこう。
今季のソフトバンクは、メジャーから戻った和田毅が15勝を挙げる大活躍。東浜巨も9勝を挙げブレークするなど、先発陣は充実していた。だが、和田はベテラン、東浜は2年続けての活躍となると未知数ということもあって、まだ「これで安心」というわけにはいかない。
それだけに、「投手層をさらに厚く」という点から、今年のドラフトで一番の評価を受けていた最速156キロ右腕の田中を5球団の競合の末に指名できたのは非常に大きい。
今春、右肩を故障した心配もあるが、体調さえ万全なら田中は新人王の最右翼。投手層を厚くするにはうってつけの投手だ。
左のリリーフに関しては、森福允彦と飯田優也が活躍したが、森福はFA権を行使して移籍可能性が高く、新たな左のリリーフ投手が必要だ。
だが、今回のドラフトでは即戦力といえる左のリリーフ投手の指名はなかった。ここは若手左腕の奮起を促すしかない。
今季のソフトバンク1軍での捕手の起用を見ると、鶴岡慎也、細川亨、高谷裕亮の3人の併用が主だった。3人とも35歳以上のベテランである上に、細川の退団が決定。若手捕手の育成が不可欠だ。
若手捕手で正捕手争いに割り入ってくる若手となると、斐紹と拓也になるが、2人ともなかなか1軍定着できないでいる。それを考えると、次世代の若手捕手がもう1人欲しい。
ソフトバンクは今ドラフトで、本誌『野球太郎』でオススメ選手として紹介した九鬼隆平(秀岳館高)を3位で指名。九鬼は4番も務めた強肩強打の捕手。高校屈指の捕手として注目を浴びるなか、今夏の甲子園では3割超の打率を残し、チームをベスト4に導いた。
「若手捕手の育成・競争」という点でも、最高の指名ができたのではないだろうか。
右打ちの若手外野手が少ないソフトバンクは、育成5位で清水陸哉(京都国際高)を指名した。
高校では最速145キロのストレートを投げる二刀流だったが、プロでは外野手で勝負する。高校通算37本塁打のパワーに加え、遠投110メートルと肩も強い。俊足も備える3拍子揃った好選手だ。
スカウトも「体ができれば、走攻守で大化けする可能性を秘めている」と話し、将来性で期待できる。
「打力重視の野手」という点でも前述した九鬼と清水が当てはまる。
その2人に加え、遊撃手・森山孔介(藤沢翔陵高)を育成4位で指名。森山は粗いながらも長打力があり、高校通算27本塁打のパワーは魅力。森山自身も指名挨拶の際に「ホームランを沢山打てる選手になりたい」と話した。
ソフトバンクは3軍があるため、若い高卒選手も試合で経験を積むことができる。九鬼、清水、森山とも実戦を通してさらなる成長に期待したい。
【総合評価】95点
今季は日本ハムに11.5ゲーム差をつけながら、大逆転され3連覇を逃す屈辱のシーズンとなったソフトバンク。
来季の巻き返しを図るなか、アマチュアNo.1投手と評された田中を5球団競合の末に獲得できただけでも大満足のドラフトとなった。
さらに1位指名の可能性もあった最速154キロ左腕・古谷優人(江陵高)を2位で指名。3位で九鬼、4位で三森大貴(青森山田)と次世代を担う高校の有望選手を次々と獲得できた。
育成指名は全員が高校生。将来性を重視したドラフトが3年続いたが、この育成ドラフトが吉と出るか凶と出るかは、まだ判断しづらい。
だが、育成でもポテンシャルの高い選手が揃っているだけに、「プロで化けたら…」と期待せずにはいられない。田中への即戦力としての期待だけでなく、活将来性の面でもとても有意義なドラフトになった。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)