センバツ切符をかけた秋季大会が真っ盛りの高校野球。一方では高校生のドラフト有力候補に注目が集まるなど、10月は高校球児の人生を変える時期でもある。
週刊野球太郎の連載企画『高校野球最前線・秋の陣』では、引き続き高校野球のホットな情報を追っていく。
まずは例年以上に注目度の高いドラフトの話題からスタート。
いよいよ10月25日に迫ったドラフト会議。夏の甲子園で名を上げた吉田輝星(金足農)の動向に注目が集まっていたが、10月9日現在、プロ志望届を提出する方向で進んでいるようだ。当初は大学進学の予定だったが、日本野球界最高峰への挑戦が決まりそう。
吉田は福井国体で自己最速を更新する152キロを投じるなど、さらに成長した姿を披露。1位競合は必至と見られるなか、根尾昂(大阪桐蔭)ともども何球団が集中するか楽しみだ。
吉田と根尾に指名が集中すると、別の年なら競合確実の藤原恭大(大阪桐蔭)のマークが甘くなりそう。あわやの1本釣りというシーンもあるかもしれない。どんなドラマが待っているだろうか。
先述した根尾、藤原、柿木蓮といったタレントを擁し、春のセンバツ連覇、甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭。彼らが引退したことで反動が出るかと思うところだが、チーム力に陰りを見せないのが王者たる所以。
秋季大阪府大会では早速、新たな才能が芽を出してきた。1年生ながら3番に座る西野力矢だ。今夏の甲子園に出場した強豪・近大付と対戦した4回戦では5打数5安打の離れ業。4回戦終了時点で、16打数9安打、12打点と驚異の打棒を見せている。
特徴は稀代の強打者・王貞治氏(元巨人)を彷彿させる一本足打法。右打ちと左打ちの違いはあるもののポジションが王氏と同じ一塁ということからも、未来が気になる。
こんな逸材をこれから先2年も見られると思うとワクワクが止まらない。先輩の根尾、藤原のようにドラフト時に1位競合を囁かれる選手に成長することを願う。
新たな逸材の出現で大阪桐蔭の天下が続きそうな予感が漂うが、他のチームも手をこまねいているわけではない。特に投手には有望な選手が揃っているので、そのなかから王者の勢いを止める投手が現れるかもしれない。
注目株の2年生投手の一部を挙げていくと、154キロ右腕の佐々木朗希(大船渡)、今夏の甲子園での奪三振ショーで話題を呼んだ西純矢(創志学園)、侍ジャパンU-18代表の奥川恭伸(星稜)、1年夏から甲子園を経験している152キロ左腕の及川雅貴(横浜)……。ほかにもまだまだいる。
現時点でスペシャルな彼らには来年の甲子園で、さらなる成長した姿を見せてほしい。
センバツ、夏の甲子園100回大会を盛り上げたミレニアム世代の高校野球は幕を閉じた。近年最強と言われた世代だけに「プレミアム世代ロス」が気がかりではあったが、しっかりと次世代が育っているところを見ると「さすが高校野球」と唸りたくなる。
数珠つなぎのように有力選手が台頭してくるのは、まさに高校野球が文化として根づいている証だ。週刊野球太郎では、そのムーブメントを引き続き追っていきたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)