そのぽっかりあいた「穴」を埋めるべく、大きな期待がかけられているのが大瀬良大地だ。
各メディアのキャンプ情報でもとり上げられることが増えた今季3年目の大瀬良は、長崎日大高→九州共立大を経て、2013年秋のドラフト1位(3球団競合)で広島に入団。ルーキーイヤーは先発として、ローテーションの一角を担い、26試合に登板し10勝8敗の成績をあげ新人王に輝いた。
その勢いで、続く2015年も先発としてシーズンに入ったが、9試合登板したところで、チーム事情もありセットアッパーに配置転換。この先発での9試合は1勝6敗で、その1勝目を上げたのも5月に入ってから。
数字だけを見ると連日打ち込まれていたような印象を受けるが、9試合のうち5試合は自責点2以下に抑えている。つまり、味方の援護に恵まれないゲームも多かったのだ。セットアッパー転向後は、42試合に登板し、2勝2敗20ホールド2セーブで、防御率は2.76。
昨年10月7日の対中日戦では、前田健太が中4日で登板して7回無失点の力投も、2番手で登場した大瀬良が8回に決勝点を奪われた。0対3で敗れた広島は、3年ぶりのBクラスが決定。降板直後にベンチで号泣した大瀬良は、ネット上で大きな話題となった。
とはいえ、慣れないリリーフで、しかも主に勝ち試合の終盤というプレッシャーのかかる場面を任されていたことを考えれば、トータルではまずまずの成績と言っていいのではないか。
今季は、早くから先発への再転向の方針が示されており、調整に余念がない。2月17日にはキャンプ2度目となるシート打撃に登板、新井貴浩やエルドレッドらチームの主力打者に対し、30球を投げ、ヒット性の当たりはゼロ。キャンプ序盤はやや不安定な面も見せていたが、日を追うごとに順調な仕上がりをみせていた。
そんな大瀬良が、自身初となる公式本『大瀬良大地メッセージBOOK−大地を拓(ひら)く−』(廣済堂出版刊・1600円+税)を発売した。
幼少期から学生時代に掛けてのエピソードやプロに入ってからの苦悩、あまり語られることのないプライベートな部分などを包み隠さず明かしており、ベンチで流したあの日の涙の真相、また前田健太、菊池涼介、丸佳浩らチームメイトの大瀬良に対するコメントも興味深い。2月中旬の発売直後に増刷が決定するなどファンの間でも注目度が高まっている。
本の中で「侍ジャパンに呼ばれるのが当たり前の選手になりたい」との決意を明らかにしていた大瀬良。しかし、21日の練習中に、右ヒジの違和感を訴え、3月の侍ジャパン強化試合(台湾戦)を辞退するというニュースが飛び込んできた。
シーズン開幕も絶望的だといい、今後の経過が注目される。
12球団の中で、最もリーグ優勝から遠ざかっているのが広島。第一次山本浩二政権時代の1991年が最後だが、その年は大瀬良の生まれた年でもある。ここ10年は3位から5位をさまよい続けていて、熱心なことで知られるカープファンのモヤモヤもピークに達しているのではないか。
その現状を打ち破るためにも、大瀬良の1日でも早い復帰が望まれる。
文=藤山剣(ふじやま・けん)