プロ野球は春季キャンプ真っ盛り。「調整」や「鍛錬」など、選手の立場によってキャンプの意味合いは変わる。なかにはこの2つに加えて、さらに「アピール」もしないといけない選手もいる。それが1軍と2軍の狭間にいる選手たちだ。
実績のあるベテランはマイペースでの練習を許され、若手の選手は開き直って練習することもできるだろう。しかし中堅は、ただ練習しているだけではいけない。光るところを見せて、「俺はここにいるぞ!」と首脳陣にアピールしないといけないのだ。でないと…、他の選手に押し出されて、なかなかチャンスは巡ってこない。
キャンプレポート第2弾は、そんな各球団の1軍と2軍の境界線上にいる選手を取り上げる。
福岡ソフトバンクホークス・13年目
一昨年はスタメンでの出場も多く、復活したかに思えた吉村。しかし昨季は一度も2軍に落ちず、出場試合数も一昨年より増えたにも関わらず、打席数、ヒット数は減少。再び横浜時代の晩年の成績に収束しつつある。
埼玉西武ライオンズ・4年目
ルーキーイヤーのオープン戦で、本来のポジションではないライトで開幕スタメンを勝ち取るほどのアピールをした金子。しかし選手としての輝きは、初年度をピークに年々鈍くなっている。
昨季は1軍から離脱した時に外崎修汰にショートを奪われかけたが、9月21日復帰するとすぐさまスタメンに戻り、最終戦まで使われ続けた。そのことからも、首脳陣からはまだまだやってもらわないと困る選手ということが伝わってくる。ミタパンのハートの次は、西武の正ショートの座を射止めてもらいたい。
東北楽天ゴールデンイーグルス・5年目
2011年のドラフトで捕手として入団した岡島だが、嶋という高い壁があったことから、出場機会を求めて外野手に転向。するとこれが大当たりして、2年目に「1番・ライト」で優勝に貢献すると、3年目もほぼフル出場でチームトップの154安打を打つまでの選手になった。
しかし4年目となった昨季は、首脳陣が変わったこともあり開幕スタメンを助っ人に譲ると、不調や故障もあり2軍へ。そうこうしているうちに、今度は松井稼頭央が外野の同じポジションにコンバートされ、さらに今季からはオコエ瑠偉も加わった。風雲急を告げる楽天の外野争い、果たして岡島は生き残れるのか。
千葉ロッテマリーンズ・6年目
1年目に126試合に出場し、100安打超えを果たすなど、「さすがドラフト1位」という活躍を見せた伊志嶺だったが、翌年見事なまでに2年目のジンクスにハマる。ここから苦難が続き、3年連続で打率が2割そこそこという結果に。
オリックス・バファローズ・5年目
2011年のドラフトで2位という高い評価を受けて、オリックスへ入団した縞田。内野ならどこでも守れるという器用さが売りだが、今のところそれは「ユーティリティ」というよりも「器用貧乏」という形で、スタメン定着の足を引っ張っているように思える。
ただ昨季は1軍と2軍を行ったり来たりした中で、セカンドとしてチーム2位のスタメン出場を達成し、徐々に上昇気流に乗りつつある。そこで1位だった西野真弘は、キャンプで1軍に呼ばれたとはいえ、故障明けだけに負けるわけにはいかない。
北海道日本ハムファイターズ・8年目
高卒のテスト生からドラフト6位指名を勝ち取り、ついに背番号「2」まで掴んだ杉谷。昨年は3割に迫る打率を残すなど結果も着いてきたことから、レギュラー奪取もいよいよ時間の問題だろう。
同じポジションの田中賢介も簡単に譲らないだろうが、若手の多い日ハムというチーム的には世代交代を果たしてもらいたいはず。それに今レギュラーを取らないと、また次の世代も来てしまう。年齢的に過渡期にあたる今こそ、真の「帝京魂」を見せる時だ!
いずれも、ファンや首脳陣の期待を集める選手たちだが、そのプレッシャーが大きいのか、なかなか浮上できずにいる。しかしプロ野球の世界には、毎年新しい選手が入ってくるため、どこかで突き抜けないと生き残っていくことはできない。今年が彼らにとっての、ターニングポイントとなることを願う。
文=森田真悟(もりた・しんご)