2011年5月20日、広島対オリックスの試合直前、岡田彰布監督が会心の笑みを浮かべた。野村謙二郎監督とオーダー用紙を交換した際、おかしな記述を見つけたのだ。
「7番DH・今村」
今村猛はもちろん投手。この年は予告先発を採用しておらず、野村監督は偵察メンバーとして今村を入れたのだが、岡田監督はすぐさま審判団に駆け寄り、
「DHは代打出されへんねんで! 絶対1打席立たなあかんねんでー」
と、ドヤ顔。事実、DHは1打席完了するまでは交代が認められない。野村監督はすぐに顔を赤らめたが、ウキウキの岡田監督が「しゃあないなあ、書き直してええよ」と言うはずもなく、7番DH・今村で試合開始。
2回表1死一塁の場面で今村に打席が回り、無事(?)バントを決めたが、もちろん広島は敗れた。「試合前に勝負は決まっていた」というスポーツ界の慣用句はこの日のために生まれたのではないだろうか。
現在、両リーグともに予告先発が採用されているため、このようなミスが起こることはないが、あるとすれば、監督同士の紳士協定によって決められる日本シリーズか。セ・リーグの新人監督たちは交流戦を機に今一度、DHのルール確認をしておきたい。
2005年、交流戦初年度の5月8日ロッテ対横浜戦(横浜スタジアム)。この試合で一際輝いたのロッテの渡辺俊介だった。9回を投げきっての完封勝利。しかし、この試合、渡辺は不慣れなバッティングに四苦八苦。なんと1試合5打席連続三振のプロ野球ワーストタイ記録に並んでしまった。
普段、打席に入る機会がないとはいえ、あまりに情けない結果に本人もガックリ。日曜朝のテレビ番組でも紹介され、完封したにも関わらず、大御所から「喝」をもらうオマケまでついてしまった……。
しかし、その後、心意気のあるロッテファンは渡辺の打席が来るたびに「ホームランホームラン」の大合唱。ちなみにロッテファンは、里崎智也が出塁した際にも「リーリーリーリー」と必要以上にあおっていた。
これまでの12年間でセ・リーグ勢の勝ち越しはわずか1回。昨年はセ・リーグからすべての貯金が消滅する「セ界恐慌」も発生し、パ・リーグがイケイケなのは周知の事実だ。
しかし、ただ弱いだけならまだ納得がいくのだが、セ・リーグ勢は痛恨の“やらかし”を犯したことがある。2012年、巨人がセ・リーグ初の交流戦王者に輝き、全体でもパ・リーグ勢に負け越しはしたものの、66勝67敗11分と大健闘。
これに気をよくしたのか何なのか、翌2013年、セ・リーグ6球団は交流戦限定でリーグのスローガン「セが制す!」のロゴを各球団の帽子に入れることに……。
この時点で嫌な予感がするが、もちろん変なフラグを立ててしまったセ・リーグは早々に負け越し。ソフトバンク優勝&パ・リーグ勝ち越しが確定後、交流戦最後の週末にその帽子を被ってプレーする恥辱を受けた。
よセばいいのに……。
文=落合初春(おちあい・もとはる)