ついに沖縄と南北海道の函館支部で幕開けした夏の高校野球。組み合わせ抽選も順次行われており、出場校が多い大会だと6月26日(金)に大阪大会、6月27日(土)に愛知大会の組み合わせが決まる。
高校野球における【2010年代夏の最強校】を分析してきたこのコーナー。最終回は、これまで認定してきた、それぞれの【最強校】の新チームになってからの戦績や注目選手、この夏の展望などをまとめていきたい。
【2010年代夏の最強校】……大阪桐蔭、八戸学院光星(光星学院)
◎大阪桐蔭(5年間で2度の全国制覇)
昨夏の甲子園優勝時から中軸を打っていた青柳昴樹、遊撃手の福田光輝、左腕の田中誠也など、攻守の軸になるような選手が残った新チーム。秋の大阪大会を危なげなく優勝し、今春のセンバツでもベスト4に進出するなど、相変わらずの強さを誇っている。
センバツ後の春の大会では、経験を積ませるために、ほとんどの試合を2年生左腕の高山優希に預けた。その結果、期待に応える好投で、昨春から4季連続となる大阪大会優勝を飾った。高山だけでなく、こちらも2年生の吉澤一翔に4番や5番を任せられる力がつき、1、2番の中山遥斗、永廣知紀らとともに、「来年」のチームの根幹を支えるような選手が揃いつつある。
2014春夏、2015春と3季連続で甲子園に出場し、現チームには下級生時から出場していた選手も多い。特に投手陣は、制球力がある中川優、ストレートの威力がある八木彬、スカウトからの評価が高い左腕の呉屋開斗、とそれぞれ違うタイプの経験ある投手が揃う。相手チームにとって、攻略するのは難しい投手陣が形成された。
野手陣は、北條史也(現阪神)、田村龍弘(現ロッテ)らが準優勝したチームと比べると小粒感は否めない。しかし、信条としているフルスイングは代々しっかりと受け継がれている。好選手タイプが多い中、センバツ後に2年生のパワフルな打者・益田敦成が台頭し、4番を務めている。
【2010年代夏の最強地区】……大阪、青森、群馬、沖縄、西東京、神奈川
◎大阪大会展望(7月11日開幕)
夏の大阪大会4連覇を目指す大阪桐蔭のライバルとなるのは、やはり履正社だ。溝田悠人、永谷暢章、2年生の寺嶋成輝と有力な投手は揃っているだけに、あとは野手の奮起に期待したい。
春の府大会準優勝の大阪偕星学園が面白い存在だ。左の光田悠哉、右の姫野優也はともに140キロを超えてくるストレートを持つ。この2枚看板がチームを引っ張る。春の決勝戦で大阪桐蔭に1−5で敗れたが、守備のミスが重なって失点したもの。改善できれば、対等に戦える力は持っている。ヤンチャな生徒たちを育ててきた山本皙監督の手腕に注目したい。
※現在発売中の『野球太郎No.015』に特集記事があります。
八戸学院光星が3季連続で甲子園に出場しているものの、春の県大会で優勝した弘前学院聖愛と、県大会2位から東北大会で優勝した青森山田の3強が拮抗している。どこが優勝してもおかしくない状況だ。
弘前学院聖愛には、2013夏の甲子園に出場したとき、試合に出ていた北畠栞人と佐々木志門が打線の中心。投げてはスタミナがある右サイドの山下弘暉を筆頭に赤川諒、恵まれた体の2年生左腕・伊藤瑠と投手も揃っている。
6年ぶりの夏の甲子園を目指す青森山田。1番・遊撃手の水木海斗はスカウトも注目する逸材だ。中学時から有望視されていた水木は順調な成長を遂げ、長打と巧打を兼ね備えた打撃と、安定した守備を見せるようになった。
センバツベスト8、春の関東大会でもベスト4の健大高崎が一歩抜けている。強肩強打でキャプテンシーもある柘植世那を中心にチーム力は高い。
その健大高崎に春の県大会で勝利し、優勝したのは前橋育英。エースの久保田倫太郎は安定感があり、野手にも井古田拓巳、石田玄太といった有望選手がいる。その前橋育英と夏の群馬大会1回戦で対戦することが決まったのが樹徳。葭葉ニコと清水蓮のダブルエースはともに140キロを超えるストレートが武器の右腕だ。初戦から壮絶な一戦になりそうな気配がプンプンする。
センバツ出場の糸満と春の県大会で優勝した興南が他校をリードしている。両チームとも魅力的な野手が多い。糸満には全身がバネのような身体能力の池間誉人、俊足強打の大城龍生。興南には軽やかなフットワークの捕手・佐久本一輝、スラッガーの喜納朝規、ほかにも俊足の選手が多い。
この2校を追う中部商のエース・前田敬太はプロも注目する投手。184センチの投手らしい体型で、現在の最速は146キロだが、まだまだ伸びてきそうな投手だ。浦添商の天久太翔は小柄だが、トルネード気味の投球フォームからキレあるストレートを投げる左腕。スプリットの落ち具合もいい。実力上位のチームに対して、ロースコアの展開に持ち込めば、ひと波乱があるかもしれない。
センバツに出場した東海大菅生、春の東京都大会を制した日大三、春の関東大会で勝ち進んだ佼成学園、怪物1年生・清宮幸太郎が入部した早稲田実の4校が抜けた存在か。しかし、それぞれに一長一短があり、決め手に欠ける。
センバツで大阪桐蔭に為す術もなく敗れてしまった東海大菅生。前評判の高かった勝俣翔貴の投球は、あれで終わるわけではないだろう。制球力を磨いて、強打のチームを抑えこみたい。
打線が強力な日大三だが、関東大会では作新学院に打ち負けてしまった。春の都大会では打撃の成長をアピールした小藤翼が、夏は投手陣のよさを引き出したいところだ。同じく、清宮や加藤雅樹らを擁し「投低打高」の早稲田実も投手陣が踏ん張れば、上位進出もあるだろう。
バランスがとれているのは佼成学園。小玉和樹は身長こそ高くないが、実が詰まったような体で、140キロ前後のストレートを投げるパワーがある。さらに変化球もよく、緩急が使える好投手だ。もともと内野手でフィールディングや打撃もいい。しかし、好選手が多い反面、爆発力は乏しく見えてしまうチームでもある。
本命は春の県大会優勝・東海大相模。小笠原慎之介、吉田凌のスカウトも注目している左右の2枚看板に、強力な打線、控え選手も力の差が少ない。充実度は全国屈指のレベルだ。
春の県大会決勝で対戦した作新学院と國學院栃木が、総合力で群を抜いている。作新学院は、鋭いスイングの選手が多い打線に、投手力も上昇中。朝山広憲の負担を軽減できる選手層になってきた。一方の國學院栃木は、左右の二枚看板と機動力が武器。右の渡邊峻平はサイドスローから強いストレートと、内角をえぐる攻める投球が持ち味。左の大垣塁は技巧派と、タイプが正反対であるのも強みだ。
続く存在は、好選手がいる文星芸大付、矢板中央、佐野日大、白鴎大足利など。しかし、チームとしてみると、投手が一世一代の好投をしない限り、差は大きいと見る。その反面、作新学院と國學院栃木の頂上対決は、白熱の一戦になること必至だ。
3連覇中の鳴門は、昨夏の前評判は高くなかったことを考えると、今夏はまだ期待できる選手が揃っている。特に、昨夏の甲子園でも投げた当時の1年生トリオが順調に伸びてきている。河野竜生はストレートのボリュームが増してきたが、変化球の質は変わらず、老獪な投球術を見せる。中山晶量はストレートの質の向上に、尾崎海晴はシンカー系フォークの改良に、それぞれ取り組んでいる。さらに2年生左腕・矢竹将弥も急成長を見せており、ライバル関係はより激しくなりそうだ。
しかし、鳴門は野手や得点力には不安要素がある。となると、昨秋の県大会優勝の城南、準優勝の川島や、春の県大会優勝の徳島商、準優勝の城北など、多くのチームに甲子園の可能性がある。もちろん、初甲子園の悲願達成を狙う生光学園や、好投手が2枚いる徳島北あたりにも可能性はある。
昨年まで絶対的エースで4番の岸潤一郎(現拓殖大)がいただけに、まだチームの芯が見えてこない今年は、【2010年代夏の最強甲子園常連校】の中で、連続出場が途切れてしまう可能性が最も高そうだ。試合では名門校らしくない守備や、走塁のミスが目立っている。
“高知3強”の高知と高知商、そして春の県大会で優勝した高知中央にとっては願ってもいない機会がやってきた。高知には、岡島秀樹(DeNA)ばりの「あっち向いてホイ」投法の左腕・鶴井拓人に、140キロ近くまで球速が伸びた内原佑真と有望投手が在籍する。高知商のクリーンナップは、がっちりした体格の選手が揃い迫力満点だ。
高知中央には投打ともに注目選手がいる。“投”では、素材は一級品の日隈ジュリアス。ムラがあり、大事な場面での登板は少ないが、夏までの短期間で一皮むけることができれば、これほど心強い存在はないだろう。“打”では、麻生涼が左中間に本塁打が打てるようになり、大きな成長を示した。“ストップ・ザ・明徳”とともに、3強を蹴散らす可能性も大いにある。