“選手”を眺めてしまうとなかなか気づかないものだが、ユニフォームのワンポイントに思いや伝統を込めた学校も多い。
ハッとさせられたのは惜しくも1回戦で敗れてしまった日大三。白地に胸の校章というシンプルなデザインのユニフォームだが、実はソックスのラインが三本線。日大三の“三”の部分をひっそりと主張しているそうだ。ちなみに日大二は二本線だ。
報徳学園もソックスに意匠。くるぶし部分が紺、紅、紺の配色になっているが、春2回、夏1回の全国制覇回数を表している。
注目の早稲田実の左肩には「B」の文字が入っている。「WASEDAなのにB?」と疑問に思うが、これは実業(Business)の「B」。センバツ出場は逃したが鹿児島実も帽子も「B」の一文字。実業出身者は「実業」の伝統に誇りを持っているケースが多い。
早稲田実の正式名称は早稲田大学系属“早稲田実業学校”高等部。我々メディアが「早稲田実業高校」、「早稲田実高」などと表記してしまうと、OBや関係者から「違う、早稲田実(早実)だ」と怒られることもあるそうだ。
作新学院も左肩に注目。珍しくなってきたアイボリー地、そしてゴシック体の校名が目に焼き付くが、左肩には校章エンブレム調のワッペンが着けられている。左が紫紺、右が真紅になっているが、この上に幾つもの星が入っており、実は春夏の甲子園出場回数。22個の星が歴史と伝統を示している。
今大会は非常にストライプのユニフォームが多い。多治見、東海大福岡、帝京五、明徳義塾、滋賀学園、至学館、健大高崎、東海大市原望洋。
東海大、帝京大系列の高校が多いこともあるが、これはもうストライプ旋風といっても過言ではないだろう。
近年の高校野球シーンで“機動破壊”の風を吹かせている健大高崎は、2010年にストライプに変更した。1999年創部で新興勢力の部類に入る滋賀学園はヤンキースを模したピンストライプだ。
多治見のモチーフは東海大のストライプ。もともとストライプ地だったが、高木裕一監督が東海大相模、東海大の出身だったこともあり、東海大に寄せ、生地を白く染め抜いている。
そのほかもリスペクト系は多数。高岡商はアンダーシャツとソックスがエンジ色だが、1923年の創部時から早稲田大OBが深く関わってきたため、早稲田カラーになっている。静岡も同時期の創部だが、こちらは明治大と繋がりがあり、明治カラーの紺、胸の校名も明治大とそっくりのフォント。先述の作新学院のアイボリー地は法政二をリスペクトしたものだ。
ユニフォームに詰まった歴史を感じながら見る甲子園もなかなか面白い。近年は胸の校名が刺繍か昇華プリントか、そのあたりのこだわりにも個人的に注目している。
文=落合初春(おちあい・もとはる)