「準備」ということで事情がちょっと違うのは、プロ野球選手だ。もちろん「球春」は開幕に向けた大切な準備期間。しかし、愛する奥様とはぐくむ家族計画という意味では、2月は「厳冬」にあたるのだ。
2012年、楽天・星野仙一監督が驚きの珍指令を出した。久米島キャンプに「恋人同伴してもOK」だという。しかし、これは異例中の異例。春季キャンプで練習に明け暮れる2月は、選手にとって愛する夫人やアモーレとしばし別離の心割れる季節になる。
当然、ベビー誕生へ向けた「愛の共同作業」はままならなくなる、というワケなのだ。
プロ野球選手の子どもの誕生月のデータが、なによりこの事実を教えてくれる。今回、プロ野球選手ジュニア173人の誕生日を調査した。すると11月生まれの子どもが最も少なく、173人中わずか8人だったのだ。
173人の誕生月と予想懐妊月は以下の通り。
なお、カッコ内の「月」は予測妊娠月。妊娠後、38週から40週で誕生する事例が多いということから、便宜上「4週間=1カ月」という換算で、妊娠月を予測しカッコ内に入れた。
■プロ野球選手ベビー173人の誕生月と予測懐妊月
また、4月、5月生まれの子どもも少ない。これは「夏を制する者はペナントを制す」の格言で説明できそうだ。4月、5月に誕生となると、妊娠した月は前年の7月、8月。この時期はペナントレースが佳境を迎え、選手が最も野球に集中する勝負のときだからだ。
逆に、最も多いのは9月生まれの子どもで35人。8月生まれも19人と多かった。この2カ月間で全体の31パーセントの子どもが産声を上げている。これは「愛の共同作業」が前年の11月、12月になるからだろう。ファンが寂しさを覚えるオフに、プロ野球選手は人生最良のパートナーと「燃える愛の2カ月間」を謳歌しているのだ。
さて、ここからは読者のみなさんにも関係する話。「まだ見ぬ我が子をプロ野球選手に!」。そう思っている方がいたら、3月生まれの筆者は、早生まれでの出産はおすすめしない。
たとえば楽天の場合、在籍選手78人中、早生まれは13人で全体の17パーセントと少ない。NPB通算2000安打・同200勝利を達成した球史に名を刻む合計71人を見ても、早生まれは12人。全体の17%だ。さらに、1950年以降の早生まれの選手となると、1977年1月30日生まれの新井貴浩(広島)ただ1人だけである。
想像してみてほしい。幼いころの「育った時間が1年間少ない」という差は、勉学でも体格の面でも、想像以上に大きなハンディキャップになる。2013年11月、筆者は桑田真澄さんの講演会を聞く機会にめぐまれた。4月1日生まれという究極の早生まれで生を受けた桑田さんは、早生まれで体験した幼少期の苦労を、聴衆に繰り返し語りかけていた。
早生まれにも才能のある球児がいるのは間違いない。しかし、早生まれをうまく救いあげる「確かな育成システム」が確立されていないのだろう。聞くところによると、Jリーグも同じ傾向とのこと。そのことを念頭に置き、ぜひ家族計画の参考にしてもらえればと思う。
文=柴川友次
信州在住の楽天推しの野球好き。イーグルスに関するありとあらゆるデータの収集を標榜するデータマン&野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の現在地を多角的に紹介するメルマガは、まぐまぐスポーツ・アウトドア有料版ランキングでTOP10入りする支持を集めている。