本家ドラフト会議の11日前となる10月6日、都内の某会議室で本誌『野球太郎』主催による『極私的プロ野球ドラフト会議2019』(以下、極私的ドラフト)が行われた。
各球団のファンがGMになりきり現状のチーム状況を加味した上で、ほんの少し(大きな?)希望というエッセンスを加えた指名を繰り広げる。その熱気は本番さながらだ。
その様子をダイジェストでお伝えしたい。
極私的ドラフトは単なる仮想ドラフトではない。スクリーンには本番のドラフトと同じように指名選手の名前や出身が映し出され、元tvkアナウンサーのライター・久保弘毅氏が本番そっくりに名前を読み上げる。さらには、アマチュア野球に造詣が深い菊地高弘氏による解説つき。まさに『野球太郎』ならではのイベントだ。
そんな極私的ドラフトは『野球太郎』の持木秀仁編集長による開会宣言で幕を開けた。
早速、1巡目の入札が始まる。今年の注目は佐々木朗希(大船渡高)、奥川恭伸(星稜高)、森下暢仁(明治大)の3人だ。
極私的ドラフトでも入札は、佐々木が5球団(中日、日本ハム、広島、楽天、巨人)、奥川が2球団(ロッテ、阪神)、そして森下に3球団(ヤクルト、DeNA、西武)と割れた。佐々木が1番人気で、森下と奥川がそれに続く。これは想定通りといったところだろう。
一方でオリックスが石川昂弥(東邦高)、ソフトバンクが西純矢(創志学園高)の一本釣りに成功した。
10月12日時点で日本ハム以外の球団は1位指名の公表をしておらず、本番の指名とどれだけ乖離があるのかはわからない。しかし2球団が1本釣りに成功するのは現実に近い形ではないか。
各球団の代表による抽選の結果、佐々木は巨人、奥川はロッテ、森下はヤクルトがそれぞれ交渉権を獲得した。
各球団のGMにとって佐々木、奥川、森下の3人に指名が重複するのは想定内だろう。むしろ今年はハズレ1位の入札からが勝負とも言える。
そのハズレ1位では河野竜生(JFE西日本)に3球団(日本ハム、広島、楽天)、佐藤都志也(東洋大)にも3球団(中日、阪神、DeNA)とここでも重複。抽選なしで交渉権を獲得したのは森敬斗(桐蔭学園高)を指名した西武だけだった。
2度目の抽選で河野は楽天、佐藤はDeNAがそれぞれ交渉権を獲得している。
3度目の入札。いわゆるハズレハズレ1位では重複がなかった。中日が宮城大弥(興南高)、日本ハムが吉田大喜(日本体育大)、広島が立野和明(東海理化)、阪神が東妻純平(智辯和歌山高)と入札どおりに交渉権が確定した。
大番狂わせと呼べるような指名は、ハズレ1位で佐藤に3球団が重複したことだろうか。大学生の捕手では3本の指に入る逸材なのは間違いないが、ここまでの人気になるとは思っていなかった。捕手としてではなく外野手へのコンバートを前提とした指名もあったのは興味深い。
1巡目指名の結果は下記の通り。
■1巡目入札
ヤクルト:森下暢仁(明治大)★
オリックス:石川昂弥(東邦高)★
中日:佐々木朗希(大船渡高)→佐藤都志也(東洋大)→宮城大弥(興南高)★
日本ハム:佐々木朗希(大船渡高)→河野竜生(JFE西日本)→吉田大喜(日本体育大)★
広島:佐々木朗希(大船渡高)→河野竜生(JFE西日本)→立野和明(東海理化)★
ロッテ:奥川恭伸(星稜高)★
阪神:奥川恭伸(星稜高)→佐藤都志也(東洋大)→東妻純平(智辯和歌山高校)★
楽天:佐々木朗希(大船渡高)→河野竜生(JFE西日本)★
DeNA:森下暢仁(明治大)→佐藤都志也(東洋大)★
ソフトバンク:西純矢(創志学園高)★
巨人:佐々木朗希(大船渡高)★
西武:森下暢仁(明治大)→森敬斗(桐蔭学園高)★
※★は交渉権獲得
ここからは驚きの、あるいは気になった指名をピックアップしたい。
毎年注目される13人目の指名権を持つのはヤクルト。大方の予想通り即戦力投手の期待が高い宮川哲(東芝)を指名した。1位で森下、2位で宮川とローテーション候補を2枚獲得に成功。現実でもこんな指名があれば、来シーズンは楽しくなりそうだ。
続くオリックスの指名でどよめきが起こる。なんと井上広大(履正社高)を指名したのだ。1巡目で石川、2巡目で井上とスラッガー候補を連続で獲得したのには恐れ入る。
2巡目でもうひとつ驚きがあった。巨人が、社会人入り濃厚と見られていたものの急遽プロ志望届を提出した林優樹(近江高)を指名したのである。佐々木を獲得した余裕からだろうか。まさか2位とは…。
高校野球の常識を覆そうと多くの取り組みを行っている武田高。その武田高からプロ志望届を提出した152キロ右腕・谷岡楓太をソフトバンクが3巡目で指名。即戦力としてではなく、じっくりと育てる方針だろう。谷岡が結果を残すことで高校野球の在り方が大きく変わるかも知れない。
ヤクルトが6巡目で指名したのは神宮隆太(西日本短大付高)。まさに神宮球場でプレーするのが約束されているかのような名字だ。江越大賀(阪神)のような指名である。と思ったが、実際の読みは「じんぐう」ではなく「しんぐう」と濁らない…。
日本ハムは6巡目で加藤雅樹(早稲田大)を指名。早稲田実時代に清宮幸太郎(日本ハム)とコンビを組んだあの加藤である。プロでも清宮とコンビで売り出せば、人気を集めそうだ。
もちろん他にも「これは!」と思わせる指名があった。そんな極私的ドラフトの詳細は11月下旬に発売される本誌『野球太郎No.33 2019ドラフト総決算&2020大展望号』でお届けしたい。
文=勝田聡(かつた・さとし)