巨人5位 田中俊太・悔いを残さないための準備を徹底して試合に挑む男
2017年プロ野球ドラフト会議で、総勢82名の選手が指名された。
2018年からのプロでの活躍に期待したい。
週刊野球太郎では、ドラフト会議の直前にインタビューした指名選手18名を特集!
プロで活躍するために戦ってきたドラフト候補と、彼らの「真価」を最も熟知している監督さんを取材した貴重な「証言」をお届けします。
今回の指名選手
巨人 ドラフト5位
田中俊太(たなか・しゅんた)
178センチ80キロ/右投左打。1993(平成5)年8月18日生まれ、神奈川県厚木市出身。父・正行さんが監督を務める相模原イーグルスで野球を始め、東海大相模高では高3時にセンバツ優勝。東海大では3年で大学選手権優勝。日立製作所では1年目に都市対抗で準優勝に貢献し、若獅子賞を受賞した。兄の田中広輔(広島)同様、社会人経由でプロ入りを目指す。
和久井勇人監督の証言
★最初の印象
東海大の横井人輝監督(当時)が大学で同期だったこともあり、就任早々東海大の試合を見ました。その時、田中は1番セカンドだったかな。その後もウチとのオープン戦で先頭打者本塁打を放つなど、実力はありました。田中はプロ一本に絞っていたので、接触したのはドラフトの後から。あまり話す機会がなかったので「とっぽいヤツかな」と心配していましたけど、会ってみると好青年で、すんなりとチームに溶け込みました。1年目から周りに実力を認められたと言っていいでしょう。
★送球が強くなった
田中は走攻守すべてに貪欲で、自分で課題を見つけて、とことん練習します。守りは、渡辺進コーチから正しい動きを徹底して教わりました。以前は二塁キャンバス寄りからのスローイングが弱かったり、カットプレーでの送球が弱かったですけど、正しいステップを学んで、強くなりました。
★ウソでもいいから…
今年の日立市長杯で、田中は右ほほにボールを受けて骨折しました。翌朝、コーチに「いけるか?」と聞かれた時に、田中は「無理です」と答えました。都市対抗の北関東予選だったら、どうかと聞かれても、「無理です」との返事でした。無理をさせる時期ではないので休ませましたけど、これがもし都市対抗がかかった北関東予選の時だったら、ウソでもいいから「試合に出ます」と言ってほしかったかな。いつもファイティングスピリッツにあふれ、試合中もよく声を出す選手なんですけどね。
★これから
プロではシュアなバッティングと、内野ならどこでも守れる守備力を武器に、ユーティリティープレーヤーで生きていけると思います。日立ではセカンドで固定しましたが、ショートもサードも守れる能力はあります。横井監督は以前「俊太をショートやサードに回す選択肢もあるけど、セカンドに固定した方がチームにフィットする」と言っていて、私もなるほどと感じました。でも、プロでやるなら、ユーティリティーでしょう。
監督さんプロフィール
和久井勇人[わくい・はやと]
1962(昭和37)年生まれ、東京都出身。桜美林高〜東海大〜日立製作所。現役時代は都市対抗10年連続出場で表彰された。社業で日立工業専修学校の校長などを務めたのち、2013年から2度目の監督に。
本人の証言
★無駄な打席が多かった
高校時代(東海大相模)は門馬敬治監督に「自分勝手にやるな」と言われていたのに、今思うと内容が薄いプレーが多かった気がします。たとえばエンドランにしても、ここは最低限転がして進塁させるのか、それともヒットを狙うのか、整理して打席に入れていな
かったです。
★悔いを残さないための準備
相手がいて、チームメイトがいての野球なんで、自分勝手にやっても意味がありません。自分の形にこだわっても、相手がよければ打てません。理想と現実をつなげていくのが練習。試合は応用、対応だと思います。試合で「何があっても大丈夫」と思えるくらい準
備しておけば、結果は仕方ないと割り切れます。なんとなく打席に入って初球を見逃して、振り返れば初球が一番甘かったら、悔いが残ります。そういうもったいない打席をなくしたいです。
★メモリアルアーチ
今年の都市対抗(三菱重工名古屋戦)では、2打席目にホームラン(都市対抗通算3100号本塁打)を打てました。あの打席は、相手が2巡目で配球を変えてきた感じだったし、1番の濱元航輝も「違う球種(カーブ)できた」と伝えてきたので、「何かありそうだな」と考えて打席に入りました。すると2球目にカーブが真ん中に入ってきて、反応で打てました。前の準備があったから、冷静にいけた打席でした。
★これから
自分のやるべきことをやって、波の少ない選手になりたいです。プロであえて憧れの人を挙げるなら、川?宗則さん(ソフトバンク)。気持ちが熱いし、ハキハキしているし、川?さんの野球の雰囲気に憧れています。
守備・走塁に関する証言
監督
脚力の割には盗塁数が多くないので、盗塁のスタートをこれから磨いてほしいですね。守備では、足を使った基本動作を覚えました。
本人
東海大相模で教わった走塁の基本は財産です。常に先の塁を狙って、打球や状況を判断して、バッテリーのクセを見抜くのは、足の速い、遅いに関係なくできることです。スピードの落ちないスライディングも、高校時代に身につけました。
フォームに関する証言
監督
打席の中で粘り強くなりました。崩されても遠くに飛ばせるのは、バットに(ボールを)乗せて運べる技術があるからでしょう。
本人
崩された方が飛ぶとかは、意識したことはありません。片手のフォロースルーも意識していません。調子がいい時は体が反応して、どんどん振っていけます。形よりも、しっかり振ることを心がけてきたので、社会人で力強さが出てきました。
グラウンド外の素顔
今年の日立市長杯で、田中は右ほほにボールが当たり、骨折した。救急車で運ばれた先は日立総合病院。田中はこの病院の総務部に配属されている。田中が運ばれた時、副院長をはじめとする関係者が多忙にもかかわらず「俊太、大丈夫か?」と様子を見に来て、急患の手配をしたという。その後、手術は無事成功し、今では支障なくプレーできている。田中は職場で愛され、支えられている。
本稿は雑誌『野球太郎 No.024 2017ドラフト直前大特集号』(2017年9月23日発行)に掲載された人気企画「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」から、ライター・久保弘毅氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。
取材・文 久保弘毅
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