長い甲子園の歴史といえど、夏の優勝はわずか1校。2015年の夏を制した東海大相模・小笠原慎之介(中日)、吉田凌(オリックス)のように同学年に2人もプロ入りする投手陣を揃えたチームは少なく、通常、優勝投手は毎年たったのひとりしか現れないことになる。
母数の少なさはあるが、それでも今井達也を含め、36人がプロ入りしている。やはり甲子園を制した投手は、並大抵の能力ではないということだろう。
日本のアマチュアスポーツ最高峰と呼ばれる大舞台で全国頂点に立った優勝投手たち。プロでの目覚しい活躍を大いに期待されるところだが、実は100勝に到達した夏の優勝投手はわずか4人しかいない。
尾崎行雄(元東映ほか)、野村弘樹(元横浜)、桑田真澄(元巨人ほか)、松坂大輔(ソフトバンク)の4名だ。
そのほかにも活躍した選手はいるのだが「4番でエース」タイプが多く、野手転向で成功したケースがほとんど。王貞治(元巨人)、畠山準(元横浜ほか)、愛甲猛(元ロッテほか)、金村義明(元近鉄ほか)が代表格だろう。現役では堂林翔太(広島)もこのタイプだ。
毎年1人の割には……、といった些細な不満が「夏の甲子園優勝投手は大成しない」というジンクスの発生源なのかも知れない。
そんなジンクスがささやかれるが、近年プロ入りした元優勝投手たちは絶好調だ。
2012年に大阪桐蔭で春夏の甲子園を連覇した藤浪晋太郎(阪神)、2013年夏を制した前橋育英の高橋光成(西武)、2015年は東海大相模の小笠原慎之介(中日)。全員が今シーズン後半には先発ローテに入っていた。
ここ数年、「あの夏からの飛躍」がスムーズに進んでいる印象だ。
勢いやスター性だけではなく、戦力としてカウントできるか。プロのスカウトの将来を見る目は厳しくなっている。
今井達也もこの波に乗り、早期デビュー&大活躍といきたいところだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)