去る12月1日(土)から3日間にわたり、愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで39選手(右投手8名、左投手6名、捕手6名、内野手10名、外野手9名)が集い、3年連続となる「侍ジャパン大学代表候補選手強化合宿」が開催された。
一昨年は今季のセ・リーグ新人王に輝いた東克樹(立命館大→DeNA)をはじめ、近藤弘樹(岡山商科大→楽天)、齊藤大将(明治大→西武)のドラフト1位組を始め、多数のドラフト指名選手が参加。昨年も巨人1位指名の高橋優貴(八戸学院大)、ソフトバンク1位の甲斐野央(東洋大)をはじめ、最上級生参加25名中10名がドラフト指名を受けるなど、逸材の発掘現場となりつつある同合宿。では、今回はどの選手がインパクトを与えたのか? 週刊野球太郎では『2019先取り大学生ドラフト候補・密着レポート!』と題し、2回に分けてレポートする。
下級生に好素材が多かった投手陣と、近年では最もハイレベルな面々がそろった捕手陣。そのバッテリーについて取り上げた前編に続き、後編となる今回は今季のパ・リーグ本塁打王・山川穂高(富士大→西武)の後継者候補を中心に、内・外野手をピックアップする。
「この合宿でのテーマは、左ピッチャーと右バッターです。右バッターで言えば山川(穂高、西武)は下級生時代(富士大)から結果はともかく、外国人ピッチャーのスピードボールに振り負けないスイングをしていた。これからの日本野球のためにもそういう右バッターを発掘、育成したい」
慎重居士型が多い代表監督が、ここまではっきりテーマを明言するのは異例である。侍ジャパン大学代表の生田勉監督は「左バッターは(今年の侍ジャパン大学代表の)勝俣翔貴(国際武道大3年)らがいるので」と、わざわざ一言添えてまで右打者発掘への意欲を侍ジャパン大学代表候補選手強化合宿で口にした。
よって、今合宿には全国各地から面白い右打者が集った。たとえば「ビデオを見て生で見たいと思った」(生田監督)札幌学生リーグ2部・小樽商科大の中山智隆(2年、内野手)は、初日のフリーバッティングで165センチ71キロの小兵らしからぬライナー性での柵越え。東海大相模高3年時に侍ジャパンU-18代表経験を持つ豊田寛(国際武道大3年、外野手)や、秋季リーグ戦で5本塁打を放った慶應義塾大のリードオフマン・中村健人(3年、外野手)、近畿大では昨年の同合宿にも召集されていた竹村陸(3年、外野手)のみならず、秋は下位打線だった中川智裕(3年、内野手)も盛んに左中間への大飛球を飛ばした。
中村健人(慶應義塾大)
中川智裕(近畿大)
そのなかで指揮官曰く「成果あり」の枠に入ったのは恐らくこの2人だろう。1人目は早稲田大で「3番・遊撃手」の座を不動にしている檜村篤史(3年)。紅白戦で放った2ランは単にパワーだけでなく「運ぶ」意識も含まれた技ありアーチ。時々、打球に対しややグラブを深く入れてしまう時があるものの、遊撃手としての守備も安定感があった。
そしてもう1人は181センチ93キロと、山川穂高を想起させるこの男。赤尾光祐(東海大北海道2年、外野手)である。
赤尾のスイングは3日間、半端なかった。初日のフリーバッティングで坊っちゃんスタジアムの中段へ軽々と2発放り込むと、2日目の紅白戦でも3打席連続三振などお構いなしのフルスイング。ついに最終打席では強烈なレフト線二塁打を放った。
最終日、雨天により室内練習場での行われたフリーバッティングでも勢いは変わらず。次々とライナーがネットを打ち抜く。「一番バットが振れているね」と某球団スカウトも、これには感心しきりだった。東海大相模高では3年夏に横浜スタジアムバックスクリーン電光掲示板直撃弾も放っているポスト山川穂高の名前は「あかお・こうすけ」。覚えておいて絶対に損はない。
檜村篤史(早稲田大)
赤尾光祐(東海大北海道)
一方、左打者にも興味深い選手たちが多数。その筆頭格が視察に訪れた岸川雄二監督が「まだ何も教えていない」と語る梶原昂希(神奈川大1年、外野手)である。189センチ84キロの大型にして俊敏、強肩。投げ方にはやや難があっても、それをもって余りある身体能力がある。あえてたとえるならば糸井嘉男(阪神)の日本ハム野手デビュー時というべきか。秋の神奈川大学リーグ戦で50打数20安打、2本塁打、13打点で初の首位打者を獲得したのも、十分うなずける。
近未来に実現するであろう侍ジャパン大学代表・佐藤輝明(近畿大2年)との「野人外野手競演」が今から楽しみだ。
梶原昂希(神奈川大)
そしてもう1人はスカウトたちが「守備はいい」とそろって褒めた盛田巧平(岡山商科大3年、遊撃手)。特にステップから捕球、送球までの安定度は、中央球界と伍しても劣るところはない。「いい制球力を持ったピッチャーたちに対するバッティングが課題」と本人も認める向上ポイントを春までに消化することができれば、2017年に近藤弘樹、蔵本治孝(岡山商科大→ヤクルト)のダブル指名の歓喜再現も、十分あり得る。
盛田巧平(岡山商科大)
取材・文=寺下友徳(てらした・とものり)