日本では、2月1日に足並みをそろえてスタートするキャンプ。しかしメジャーのキャンプ(スプリングトレーニング)は、2月中旬の始動がポピュラー。2月前半はまだオフであり、日本人選手がNPBのキャンプ地を訪問するニュースをみかけるのもこのためだ。
また、日本にやってくる新外国人選手の多くが「調整不足」「不安」と見なされるのも、このタイムラグがあるから。アメリカ流の2月中旬始動に慣れた選手は、まだまだ体が温まっていない。特に投手は、開幕または開幕後にピークを持ってくるように指導されているため、球速もこれから急激に上がるはずだ。
そして、メジャーでは3月に入ると早くもオープン戦が始まる。「1試合でも多くやれば儲かる。練習は金にならない」というアメリカ的な発想・価値観だ。そのため、選手たちは実戦形式のなかで調整を進めていく。キャンプで調整後にオープン戦で仕上げるという日本のやり方とは異なるのだ。
日本では宮崎・沖縄が熾烈なキャンプ誘致合戦を繰り広げているが、メジャーでもキャンプ地はやはり暖かいところが選ばれている。西海岸のアリゾナ州、東海岸のフロリダ州が2大キャンプ地で15チームずつがリーグを作ってオープン戦を行っている。
主な日本人選手の振り分けは以下の通り。
≪フロリダ州≫
田中将大(ヤンキース)
上原浩治・田澤純一(レッドソックス)
イチロー(マーリンズ)
≪アリゾナ州≫
前田健太(ドジャース)
ダルビッシュ有(レンジャーズ)
岩隈久志、青木宣親(マリナーズ)
松井秀喜氏の時代から「フロリダ州・タンパ」のイメージが強いが、アリゾナキャンプもチーム数は同数。今年、メジャー挑戦がはじまる前田健太はアリゾナ州のキャメルバック・ランチがキャンプ地だ。
キャンプイン後もメジャーリーガーの情報が少ない理由は、全体練習の時間の短さにもある。日本では朝から夕方まで練習が続くが、メジャーのキャンプの全体練習は3時間ほど。これは広大な土地に多数のグラウンドがあるアメリカだからできることで、チームは各グラウンドに分散し、効率良く連携メニューを終わらせるのだ。
日本だとグラウンドは1〜2面がほとんど。どうしてもスケジュールが詰まってしまうが、メディア側から見れば、ネタを収集しやすい利点もある。
そして、日本では「○○ブルペン熱投、200球!」などの報道もできるが、あちらでは投球制限があるので、1日に30球ほど。サクサクとメニューを終わらせて、室内で自主トレに励むのがメジャー流のキャンプなのだ。
そのため、3月に実戦が始まるまでは正直ネタ不足。日本のキャンプに慣れた日本人記者たちの頭を悩ませることになり、結果、移動中の選手のコメントが中心になってくる。
この難しい局面からどうやってファンの目を惹くネタを持ってくるのか。メジャーのキャンプ情報をそういった視点で見るのも面白いだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)