吉田は敦賀気比高から東都大学リーグの青山学院大、茂木は桐蔭学園高から東京六大学リーグの早稲田大と、ライバルとして競い合うイメージはあまり沸かない。それでも、2人は互いを意識していた。
2人をつなげたのは大学日本代表だ。4年時のユニバーシアード大会では3番・茂木と4番・吉田が打線を引っ張り、チームを大会初優勝に導く。特に茂木は期間中の打率5割と、各国の投手から幾度も快音を響かせた。
「ストイックさとしっかりとした理論を持っていました」と吉田が茂木を称せば、「吉田に追いつくには、あれだけ振らないとダメ」と茂木は吉田を一目置く。小柄な左打者(ともに170センチそこそこ)かつ強くスイングすることが持ち味など共通点も多くみられ、切磋琢磨してバッティングを磨いてきた。
ドラフト1位の吉田と同3位の茂木。順位こそ差があれど、2人とも即戦力として獲得されたのは間違いない。その証拠に、3月25日の開幕戦は互いにスタメン出場を果たしている(吉田:1番・指名打者、茂木:6番・遊撃)。
ただ、プロ入り後は順風満帆だったわけではない。吉田は自主トレ・春季キャンプでケガに見舞われ、茂木はオープン戦で極度の打撃不振に陥った。
逆境が訪れたとき、2人を救ったのはやはり自らのバットだった。
茂木は3月16日のオリックス戦で2打席連続本塁打をマーク。レフトに右中間に、豪快な一撃を見舞った。新人がオープン戦で2打席連続アーチを放ったのは、44年ぶりの出来事とのこと。離れ業で開幕スタメンの座を“もぎ”取った。
他方、吉田はオープン戦ラスト3試合となった19日の阪神戦から1軍合流を果たし、初日から鋭い当たりの安打をマーク。翌日にはあの藤川球児から右翼席後方の壁に直撃する特大弾を放ち、強いインパクトを残した。当初は首脳陣の意向で「2日間限定」の1軍帯同だったのを、結果を残すことで方針を変えさせたのだ。
昨季、オリックスと楽天が下位に沈んだのは、得点力不足も一つの要因だった(オリックスが5位で519点、楽天が6位で463点。チーム総得点数と順位が比例)。吉田と茂木はこれを解消する存在になれるだろうか。
文=加賀一輝(かが・いっき)