例の風評とは、プロ野球ファンの間で密かに囁かれている「高卒ドラ1左腕は“地雷”」というワード。これまでの歴史を俯瞰すると、51人もの高卒左腕がドラフト1位でプロ野球界に進んでいるが、100勝以上を挙げたのは江夏豊(阪神ほか、通算206勝)と石井一久(ヤクルトほか、日米通算182勝)の2人のみだ。
直近20年間で1位指名された高卒左腕と通算成績を見てみよう。
(※成績は8月30日時点。★は現役選手、◎は独立リーグなどで現役)
【1996年】
前川勝彦(PL学園→近鉄)
≪通算≫149試合:31勝45敗/1ホールド
≪引退≫2011年
【1996年】
伊藤彰(山梨学院大付→ヤクルト)1軍登板なし
≪通算≫1軍登板なし
≪引退≫2000年
【1997年】川口知哉(平安→オリックス)
≪通算≫9試合:0勝1敗
≪引退≫2004年
【1999年】
河内貴哉(國學院久我山→広島)
≪通算≫166試合:16勝28敗/23ホールド
≪引退≫2015年
【1999年】
◎正田樹(桐生第一→日本ハム)
≪通算≫123試合:25勝38敗/4ホールド
※2002年新人王
【2002年】
★雄平(東北→ヤクルト)
≪通算≫144試合:18勝19敗/17ホールド/1セーブ
【2005年】
辻内崇伸(大阪桐蔭→巨人)
≪通算≫1軍登板なし
≪引退≫2013年
【2005年】
★村中恭兵(東海大甲府→ヤクルト)
≪通算≫173試合:44勝55敗/6ホールド
【2005年】
柳田将利(青森山田→ロッテ)
≪通算≫1軍出場なし
【2005年】
★片山博視(報徳学園→楽天)
≪通算≫206試合:8勝16敗/48ホールド
【2006年】
★吉川光夫(広陵→日本ハム)
≪通算≫154試合:48勝55敗
【2006年】
延江大輔(瀬戸内→オリックス)
≪通算≫1軍出場なし
≪引退≫2012年
【2007年】
★田中健二朗(常葉学園菊川→DeNA)
≪通算≫127試合:7勝6敗/38ホールド/1セーブ
【2008年】
赤川克紀(宮崎商→ヤクルト)
≪通算≫76試合:14勝20敗
≪引退≫2015年
【2009年】
★菊池雄星(花巻東→西武)
≪通算≫104試合:41勝34敗/1セーブ
【2009年】
★岡田俊哉(智辯和歌山→中日)
≪通算≫203試合:13勝14敗/40ホールド/3セーブ
【2011年】
松本竜也(英明→巨人)
≪通算≫1軍登板なし
≪失格≫2015年
【2012年】
★森雄大(東福岡→楽天)
≪通算≫11試合:2勝5敗
【2013年】
★松井裕樹(桐光学園→楽天)
≪通算≫141試合:8勝13敗/24ホールド/61セーブ
【2015年】
★小笠原慎之介(東海大相模→中日)
≪通算≫11試合:0勝5敗
こうして並べてみると、確かにほとんど働かなかったケースもあるが、入団から数年後にメキメキと頭角を現すパターンが多い。
村中恭兵(ヤクルト)は今季リリーフとして復活を果たし、岡田俊哉(中日)や田中健二朗(DeNA)もリリーフとしてチームの底力に。吉川光夫(日本ハム)や菊池雄星(西武)も先発として貯金を生み出す存在だ。
また雄平(ヤクルト)はイレギュラーだが、野手転向で大成功。松井裕樹(楽天)にいたっては2年目には守護神の座を勝ち取り、セーブポイントを量産中。ルーキーの小笠原慎之介(中日)も勝ち星こそないが、先発ローテに名を連ねている。
“地雷”から“銀”に変わりつつある印象の高卒ドラ1左腕。松井や小笠原とともに、履正社・寺島には“銀”から“金”に変える活躍を期待したい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)