セ・リーグは高木勇人、パ・リーグは牧田和久がトップを走る。両投手ともに、昨年もスピードアップ賞のリーグ表彰を受けており、抜群のテンポを誇る。
特に牧田の8.0秒は驚異的。ボールを受けてから投球するまでの間隔なので、サインを見たら“即投球”の域である。もちろん、牧田の投球前に打席を外すことを試みる打者もいるが、再三再四のタイムは警告対象。アンダースローで球速はないが、構え遅れを誘う“スピーディ投球術”で球界を生き抜いている。
対してセ・リーグトップの高木は投球テンポこそ秀逸だが、今季は防御率4.56。7月3日時点で規定投球回数をクリアしている投手の中では最下位。「単調」と見ることもできる。
1球1球の投球間隔が短くても、打たれてしまっては試合時間は伸びる一方……。高木はあえて投球間隔をずらした方が、試合時間短縮に結びつくかもしれない。もしくは牧田並みの超速のほうが「アリ」か。今以上にポンポン投げる高木を見てみたい気もする。
昨季まではセ、パで1人ずつの選出だったが、今季からは両リーグで投手と野手の1人ずつ、計4人が表彰されることが決まっている。つまり、野手もはっきりとしたランキングが明示されるのだ。
6月20日発表の打者ランキングでは、セ・リーグの1位が大島洋平(中日)で12.0秒、パ・リーグの1位が中村晃(ソフトバンク)で12.6秒だった。
相手投手にも左右される数字だが、両者はともにサッと打席に入り、素早く構える選手。スピーディな選手は審判からの評判もよく、誰からも好印象だろう。
過去のスピードアップ賞では、栗山巧(西武/2013〜2014年)、阿部慎之助(巨人/2013年)などの野手が受賞することもあったが、当時はタイムだけではなく、審判団からの推薦や攻守交代の際のスピードなども審査基準になっていた。
今季は純粋なタイムだけが判断基準。果たしてどういう結果になるか、ファンの印象との乖離はないかにも注目が集まる。
文=落合初春(おちあい・もとはる)