止まらない故障者の連鎖…ヤクルトは「呪い」を払拭できなかった
開幕前、『野球太郎 プロ野球[呪い]のハンドブック』で指摘していたヤクルトの呪い、懸念されていたのは以下の4項目だった。
◎止まらない故障者の連鎖
◎リーグ最多の失点数
◎交流戦の連敗地獄
◎リーグ最多の1点差負け
いや、もっとあるだろう! という声が聞こえてきそうだが、ヤクルトの場合はとにかく「故障者の呪い」が大きすぎる。この点を重点的に振り返ってみたい。
止まらない故障者の連鎖……【継続中!】
昨季のヤクルトで、規定打席に到達したのはバレンティンだた1人。それが今年は山田哲人、雄平、川端慎吾、畠山和洋、そしてバレンティンと5人もの野手が規定打席をクリアしている。そして驚くべきことに、バレンティンをのぞく4人が打率でリーグ10位以内。その結果、最下位にもかかわらず、チーム打率とチーム得点数がリーグトップと驚くべき現象を生み出しているのだ。
▲月間MVPも獲得し、チームに大きく貢献した雄平
上記5人のうち、畠山とバレンティンは一時ケガのため離脱した時期もあったが、それでもここ数年のチーム事情を考えれば、かなり改善されたといえる。結局のところ、ヤクルト戦士は試合に出さえすれば結果を残す、ということなのだ。
一方で、ケガの連鎖が止まらなかったのが投手陣。今年のキャンプは珍しく離脱者ゼロで打ち上げたが、その後に期待のドラフト1位・杉浦稔大が「右ヒジの靭帯断裂」でリタイア。期待のドラ1ルーキーも呪いには勝てなかったか。その後、手術はせずにリハビリでの回復を選択し、マウンドに戻ってこられたのは7月に入ってから。9月10日、ようやくプロ初先発を務め、6回2失点9奪三振の好投。ストレートは大学時代以上のノビを感じた。来年以降に期待したい。
シーズン開始後も受難は続く。バーネットが4月2日の試合で負傷し、検査したところ「左膝靱帯の部分断裂」と判明。復帰まで2カ月以上を要した。
また、昨年4月の右ヒジ手術からの復帰を目指していた館山昌平は4月5日のイースタン戦に登板したが、わずか1球で降板。4月10日に右ヒジ外側滑膜ヒダの除去手術を受けたところ、さらに「右ヒジ靭帯の再断裂」が判明。当初発表があった「実戦復帰まで約3カ月」は、「実戦復帰まで1年」に伸びてしまった。
▲復活を期待された館山昌平は早い段階でシーズンを棒に振ることが決まってしまった
長引くケガとの戦い、といえば、2011年に右肩痛を発症し、昨年肩のクリーニング手術を受けた由規も継続中。6月のイースタン戦で実戦復帰し、いきなり最速155キロを計測して話題を集めたが、今季ここまで1軍での復帰登板はない。
さらに5月には村中が腰痛で2軍落ちするなど、挙げればキリがない投手陣の受難。極めつきは昨年の新人王にして最多勝投手、小川泰弘が4月18日の試合で打球を右手甲に当て骨折! 復帰まで約3カ月かかってしまったことだろう。
なんだか、軽減した打撃陣の呪いまで投手陣に降り掛かってしまったようで余計に恐ろしい。これぞ「呪いの質量保存の法則」といったところだろうか。
さて、その他の呪いだが……
◎リーグ最多の失点数……【継続中!】
◎交流戦の連敗地獄……【継続中!】
◎リーグ最多の1点差負け……【継続中!】
結局のところ、他の呪いは、ケガ人が多い故の副産物、といってもいいだろう。失点数が多いのは当然、投手のコマが揃っていないから。現状で12球団唯一となる600失点オーバーはぶっちぎりのワースト記録だ。
また、4月〜5月にケガ人が続出し、特に唯一の頼みの綱であった小川泰弘が離脱していた交流戦も勝てるはずはない。それでも、今季の交流戦は10勝12敗で全体9位。2010年の9連敗、2012年の10連敗に比べればかなり改善した、といえるかもしれない。
そして、昨季はリーグ最多となる25回も経験してしまった「1点差負け」は、今季ここまで19回。少しは改善した、といえなくもないが、あいかわらずリーグ最多を誇っている。
2年連続でのリーグ最下位が濃厚なヤクルト。それでも、昨季終盤に若手起用に切り替えたことで、今季の山田哲人や雄平の躍進につながった、と見ることができる。呪いが解けないのなら、その分、他の分野を改善したり、工夫していくしかないのだ。今季の打撃成績を維持し、投手陣の呪いを少しでも改善すれば、来季のヤクルトには明るい未来が待っている! ……かもしれない。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。
「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。
『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、
『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/
@oguman1977
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