4月20日、横浜対広島5回戦。広島は、先発クリス・ジョンソンからゲームを引き継いだ中田廉、オスカル、永川勝浩、江草仁貴が打ち込まれ計7失点。結果10-0で惨敗。
特に永川は満塁の場面で登板。ホセ・ロペス(DeNA)に満塁弾を浴びるなど、完全にゲームを壊してしまった。
奇しくも永川は、この日が500試合登板のメモリアルゲーム。この歴代95人目の偉業を、最悪の形で達成した永川は不憫としか言いようがない。
イニング終了後には、スコアボードで永川の偉業達成を祝福する文字と、花束が贈呈された。決まりごととはいえ、この最悪なタイミングでの花束贈呈には、DeNA側の悪意がないことはわかっていても、悪意を感じてしまうのはファンの性なのか。
複雑な表情で花束を受け取る永川の背中に哀愁を感じたのは広島ファンだけではないだろう。達成時は最悪のタイミングであったが、永川の残した偉業は賞賛されるべき。暗黒期の広島で“奮投”し続けた500試合の登板は、その数字以上の価値がある。この悔しさで奮起し、再び輝きを取り戻してほしい。
続く4月22日の阪神戦でも、中田、オスカルが打ち込まれた。24日現在、広島の中継ぎ防御率は、5.22でリーグワーストとなっている。
先発防御率3.24はリーグ3位、チーム打率.278はリーグ2位と、中継ぎ以外は軒並み好調な広島。やはり中継ぎ陣の不調が唯一の悩みと言えるだろう。
セットアッパーの、ジェイ・ジャクソン、抑えの中崎翔太が磐石なだけに、もう1枚信頼のおける中継ぎがいればチーム浮上は間違いない。中継ぎ投手陣の最後のピースに「はまる」投手は誰なのか?
そこで期待したいのが、今井啓介だ。2軍ではセットアッパーとして起用され、9試合で失点はわずかに1と、神がかった投球を続けている。8イニングで、5つの四球を出しているのは気になるが、結果を残しているのは事実。
昨季は2軍でもワースト記録となる16失点を喫するなど、散々だった今井。今季は中継ぎに専念することで、結果を残せているようだ。
かつては「黒田2世」とまで言われた大器がその実力を発揮すれば、リリーフ陣の一角を担うだけの力はあるだろう。雪深い新潟出身ゆえか、例年は春先と秋口に神がかった活躍を見せる今井。今こそ1軍昇格の絶好のタイミングだ。
もう1人の候補は、かつてのWBC代表投手・今村猛だ。2011年から2013年、3年連続で50試合以上登板。一時はセットアッパーとして君臨していた今村。しかし近年は打ち込まれることが多くセットアッパーの地位を失った。
今季はここまで6試合8回1/3を投げて3失点。防御率3.12と、数字的には完全復活したとは言いがたい。
しかし、全盛期の片鱗を見せつつあるのもまた事実。8日の阪神戦では、絶好調の江越大賀相手に、全球直球勝負を挑んで三振を奪っている。その投球には自信と力強さが感じられた。広島中継ぎ陣が総じて自信喪失気味の投球をしているなか、自信を持って投げ込む今村の姿が唯一の光明なのかもしれない。
4月22日には、江草に代わりブレイディン・ヘーゲンズが、23日には中田、オスカルに代わって戸田隆也、九里亜蓮が1軍昇格。早くも中継ぎ陣にテコ入れが入った広島。チーム浮上の鍵を握るリリーバーが出現すれば、25年ぶりの悲願も夢ではない。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)