菅野はストレートで圧倒することをテーマに掲げている。勝負球として意識しているのは、スライダーや封印を解いたワンシームではないのだ。
菅野の理想はストレート、スライダー、ワンシームを同じフォーム、同じ軌道から投じること。その結果、ストレートのイメージを持っている打者は、スライダー、ワンシームに対応ができなくなってくるのだ。
ストレートで圧倒できるからこそ、ストレートを意識した打者に対して変化球が生きる。今季の菅野のテーマの背景には、このような変化球への狙いが潜んでいる。
◎ワンシームとは?
菅野が今季解禁したワンシームとはどういった変化球なのか。おさらいしてみたい。
ワンシームという球種が日本で認識されるようになったのは、2010年頃にダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)が投げ始めたころからだろうか。ストレートと同じ球速で、最後に手元で沈み込むのがワンシームの変化だ。ストレートと見分けがつきにい分、空振りが取れ、凡打も増える。打者からするととてもやっかいな球なのだ。
このワンシームは、菅野以外にも成瀬善久(ヤクルト)、山口俊(DeNA)などが今季から取り入れている。多くの投手が使うことで昨年の“フロントドア”、“バックドア”に続き流行するかもしれない。
オールスターのファン投票で初めて1位を獲得。ファンからの信頼も厚くなった菅野。圧倒するストレート、そしてワンシームでオールスター、後半戦も野球ファンを楽しませてほしい。
文=勝田 聡(かつた さとし)
松坂世代のひとつ上にあたりサッカーの黄金世代となる1979年生まれ東京育ち。プロ野球、MLB、女子プロ野球、独立リーグと幅広く野球を観戦。 様々な野球を年間約50試合現地観戦し写真を撮影する。プロ野球12球団のファンクラブ全てに入会してみたり、発売されている選手名鑑を全て購入してみたりと幅広く活動中