ロシアW杯で大健闘を見せたサッカー日本代表。彼らの大健闘に拍手を送りつつ、野球目線でW杯を眺めてみた。後編の今回は世界を相手にピッチで輝いた選手たちの母校に注目。
前編では「半端ない」大迫勇也の母校・鹿児島城西(鹿児島)の野球部が2016年春秋、2017年春夏で県ベスト8に進出し、甲子園が夢ではないところまで迫っていることに触れた。大迫に続いてほかの選手の母校はどうだろう。第100回の記念大会となる今夏の甲子園にたどり着けるのか。
甲子園出場に近い位置につけているのが本田圭佑の母校・星稜(石川)。サッカー部は2014年に全国高等学校サッカー選手権大会で優勝を飾るなど強豪だが、野球部も箕島との伝説の延長18回などの名勝負を繰り広げてきた北陸を代表する名門校だ。
星稜はこの春のセンバツでベスト8。今夏も優勝候補筆頭に挙げられている。自慢は層の厚い投手陣。抜群のキャプテンシーでチームの精神的支柱になっている投手兼主軸打者の竹谷理央、センバツ躍進の原動力となった2年生エースの奥川恭伸、成長著しい寺沢孝多のほかに、1年生の好投手・萩原吟哉と寺西成騎が加わるなど底上げは万全。萩原は星稜中時代に中学日本一を経験しており、全国での勝ち方を知っている。
ライバルの日本航空石川は強敵だが、春季石川県大会の決勝で両校がぶつかった際には、奥川が被安打4、12奪三振でシャットアウトとしっかり抑え込んだ。3大会連続のゴール&アシストで世界のレジェンドとなった本田に続いて、野球部もさらなる甲子園伝説を積み上げられるか。
世界クラスのオーバーラップと無尽蔵のスタミナで攻守に活躍した長友佑都の母校・東福岡(南福岡)も優勝候補のひとつ。強気の投球が光る本格派右腕の金光雄紀と「1番・捕手」でチームを引っ張る村上喬一朗のバッテリーは、総合力では南福岡一。村上は難関私大を目指す生徒が集まる特進コースに所属しており、頭脳も◎だ。
東福岡は2007年を最後に夏の甲子園から遠ざかっている。2001年のセンバツベスト8が過去最高成績。今夏は11年ぶりの甲子園切符をつかみ、強豪復活を果たすチャンスだ。
なお、東福岡は村田修一(BCリーグ・栃木ゴールデンブレーブス)の母校でもある。村田は「松坂世代」の1人として3年春夏甲子園出場。センバツでは横浜・松坂大輔(中日)と3回戦で投げ合い、敗れている。
ほかの甲子園に近い注目母校を挙げると日本代表のイケメン司令塔・柴崎岳の青森山田(青森)、世界でフォワードを張り続ける岡崎慎司の滝川二(東兵庫)、センターバックとして守備の要となった昌子源の米子北(鳥取)か。
青森は今夏も青森山田と八戸学院光星の2強がリード。昨秋の青森県大会は青森山田、今春は光星学院と優勝をわけ合っている。今夏の青森山田の注目選手は一塁手・赤平竜太と外野手の中澤樹希也。赤平は勝負強い打撃が売り。中澤は昨夏の甲子園で筒香嘉智(横浜、現DeNA)以来となる2年生での大会3本塁打を放っている。
春季兵庫県大会準優勝の滝川二は、兵庫が西と東の2ブロックに分かれたため甲子園出場のチャンスがグッと広がった。市尼崎、神戸国際大付、報徳学園などの強豪が揃うが、春季県大会4試合21回2/3を1失点に抑えたマウンド度胸満点の2年生エース・田邊大登を中心に3年ぶりの出場を目指す。
米子北は、春の鳥取県大会で強敵の鳥取城北を破って勝ち上がり準優勝。最速143キロのエース・楢原健汰は鳥取城北戦で5回を無安打無失点。打っては3ラン本塁打を3本と八面六臂の活躍。一躍、ドラフト候補に躍り出た。全国屈指の強豪として名を轟かせるサッカー部に負けじと、2度目の甲子園切符をつかみたい。
甲子園に近い存在とは言い難いが、死闘となったベルギー戦で芸術的なミドルシュートを叩き込んだ乾貴士の母校・野洲(滋賀)にも触れておきたい。
2005年に全国制覇を果たした野洲サッカー部。その代名詞は、華麗なパスワークで波状攻撃をしかける「セクシーフットボール」だ。この攻守一体となったきらびやかでおしゃれなプレースタイルを見たときは、本当に驚いた。その驚きは、2004年センバツ準優勝、2005年センバツ優勝を勝ち取った愛工大名電のバント戦法、そして健大高崎の機動破壊を初めて見た時の衝撃と似ている。
野洲が甲子園に出場したのは1988年のセンバツ1度のみ(初戦敗退)。夏の県大会を見ると2012年に準優勝、2015年にベスト4、2017にベスト8と善戦が続いている。W杯でもっとも名を挙げた先輩に負けず、今夏は晴れの舞台に立ちたい。
文=山本貴政(やまもと・たかまさ)