社会人野球における2大大会の一つで、社会人の選手すべてが目指す最高の舞台・都市対抗野球の季節がやってきた。今年は7月13日から13日間にわたって全36チームで争われる。ドラフト候補にとってはドラフト前に行われる唯一の全国大会でもあり、プロのスカウトへアピールする絶好の機会だ。
今年も多くのドラフト候補たちの出場が予定されているので、そのなかから特にチェックしてほしい選手をピックアップしよう。
2016年のドラフト戦線で「九州四天王」と呼ばれた4人の高校生がいた。そのうち3人はプロ志望届を提出。無事にプロ入りを果たし、今シーズンまでに1軍でも活躍を見せている。それが山本由伸(都城高→オリックス)、梅野雄吾(九産大九産高→ヤクルト)、浜地真澄(福大大濠高→阪神)の3人だ。
そのなかで唯一、プロ志望届を出さなかった選手が、今年のドラフト注目選手として話題を集める。れいめい高からJR東日本へと進んだ太田龍だ。
太田は190センチの長身から150キロを超えるストレートを繰り出す大型右腕。昨年の都市対抗では3試合に登板し、11回1/3回を投げ無失点と結果を残した。ドラフト解禁イヤーとなる今年はそれ以上の投球を期待されている。
やや制球にばらつきがあるものの、そのストレートは魅力十分。変化球はスライダーにフォークと空振りを取れる球もある。プロからの評価は高く、故障さえなければドラフト上位指名は確実な状況だ。かつてのライバルたちから3年遅れてのプロ入りとなるが、最高の評価を得ることができるだろうか。今年の都市対抗野球で活躍し、1位指名を確実なものとしたい。
近年、森唯斗(三菱自動車倉敷オーシャンズ→ソフトバンク)、山岡泰輔(東京ガス→オリックス)、田嶋大樹(JR東日本→オリックス)など、高卒社会人というカテゴリーからプロ入りを果たした投手の活躍が目立つ。先に紹介した太田も高卒社会人からプロ入りを目指す一人だ。
鳴門高からJFE西日本へと進んだ左腕の河野竜生も同じルートでプロ入りを目指している。
河野は社会人1年目から都市対抗野球で登板経験があり、今年で3年連続となる出場だ。しかし、2年目まではいずれも補強選手としての出場だったため、自チームでの出場は今年が初となる。
昨秋の日本選手権では2試合連続完封を達成し、一躍注目を浴びる存在となった。身長174センチと上背はないものの、内角と外角にきちんと投げ分けられる高い制球力とスライダー、ツーシーム、ストレートのコンビネーションで相手打線を翻弄する好投手。今年に入り、ボールに強さが出てきて、球速も上がってきた。
即戦力先発左腕が欲しい球団にとっては魅力的な存在となりそうだ。
右の大砲候補として呼び声の高い社会人きってのスラッガーが片山勢三(パナソニック)だ。九州共立大時代のリーグ戦通算打率は3割を超え、14本塁打。当時からその長打力は注目されていた。4年秋の明治神宮大会では2本塁打を放っている。しかし、プロ志望届を出すことはなく、パナソニック入り。この2年間で打力に磨きをかけた。
一塁守備に不安はあるものの、一発もある長打力は大きな魅力だ。176センチ102キロの体型は、175センチ102キロの中村剛也(西武)とほぼ同じで、山田哲人(ヤクルト)や坂本勇人(巨人)といったスマート型の打者とは違うぽっちゃり型の体型は、プロで人気が出そうな要素でもある。スラッガー候補として注目したい存在だ。
そのほかの都市対抗に出場予定の投手では宮川哲(東芝)、山口裕二郎(JR東日本)、阪本大樹(大阪ガス)、宮田康喜(日本製鉄広畑)。野手では諸見里匠(日本通運)、小深田大翔(大阪ガス)らがドラフト候補として挙がっている。
今大会をきっかけに未来のスタープレーヤーは誕生するだろうか。ドラフト指名候補たちのアピールに注目したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)