守護神の危険信号、高卒ドラ1、君はこんなもんじゃない!…オリックスは「呪い」を払拭できたのか?
開幕前、『野球太郎 プロ野球[呪い]のハンドブック』で指摘していたオリックスの呪いについて、懸念されていたものは以下の5つ。
◎点の取れない打線
◎守護神の危険信号
◎左腕不足の解消
◎高卒ドラ1の呪い
◎「君コン」No.1選手の復活
果たして今季のオリックスは、この5つの呪い要素を解消できたのだろうか(記録は9月21日現在のもの)。
◎点の取れない打線……【解消!】
チーム防御率はリーグトップの3.31を記録するも、昨季は5位に終わったオリックス。原因は点の取れない打線にあった。チーム得点、打率、出塁率、得点圏打率はリーグワースト。日本ハムから糸井嘉男が加入した効果は見られなかった。
ところが、今年はどうだろう。133試合を消化した段階で、オリックスのチーム総得点は547。これはソフトバンクに次いでリーグ2位の成績だ。この要因は何といっても今季から加入したヘルマンとペーニャの存在が大きい。この2人は数字的活躍に加え、チームの雰囲気を変え、積極的な打撃と走塁を生んだ。糸井との組み合わせも、効果てきめん。「呪い」は解消され、オリックス躍進の大きな原動力となった。
◎守護神の危険信号……【要観察】
2010年から昨季まで4年間の合計登板数は265と、リーグトップの数字を築き上げた守護神・平野佳寿。開幕前はその登板過多が心配されていた。しかし、フタを開けてみると例年通り開幕から平野はフル稼働。133試合終了時点で55試合に登板し、1勝36セーブをマークして、最多セーブの球団記録を塗り替えるなど、チームの上位争いに貢献している。
しかし、20日のロッテ戦で1点リードの場面に登板した平野は、制球が定まらずまさかの逆転サヨナラ負けを喫してしまう。これで9月に入り、8日、9日、20日と3敗を喫し、シーズンでは5敗。終盤にきて“勤続疲労”が浮き彫りになってしまった。ソフトバンクとの激しい優勝争いに影響が出ないか、今後も平野の投球から目が離せない。
◎左腕不足の解消……【解消の方向へ?】
今季は、2年目の松葉貴大がブレイク。ここまで7勝1敗、防御率2.91と好成績を収めている。特に西武、ロッテと相性がよく、ともに防御率は1点台。対ロッテは3勝と、完全にカモにしている。また、中山慎也は32試合に登板して防御率2.34と渋い働きをみせている。
しかし、昨季の左腕投手の成績を足すと12勝8ホールドだったのが、今季は10勝1ホールドと微減している。松葉と中山以外の左腕が活躍しておらず、全体で見ると、呪いを払ったとは言えないだろう。
今季は数字が残せなかった海田智行、八木智哉はもう少し貢献できる投手であり、1軍登板はなかった古川秀一や前田祐二の復活、新人の大山暁の強気のピッチングにも期待したい。こういった面々が力を発揮すれば、パ・リーグトップのチーム防御率を誇る投手陣がさらに強力になるはずだ。
たしかに、左腕不足ではあるが、右打者も左打者も関係なく勝負できるタイプの投手が多く、左腕が台頭してこないと困る、という状況ではない。ある意味で、左腕不足は解消しているかもしれない?
◎高卒ドラ1の呪い・・・【解消へ】
オリックスは、高校出のドラフト1位が伸び悩む傾向がある。過去には甲斐拓哉(東海大三)、丹羽将弥(岐阜城北)、川口友哉(平安)など、活躍できずに球界を去った選手が多い。さらに、指名するも入団拒否されるなど、呪われているとしか思えない出来事もあった。
そんな中、次の項目で詳しく紹介するT−岡田も駿太も活躍し、この呪いは解かれたといってもよいだろう。昨年まで打率2割にも達しなかったが、今季の駿太は、116試合に出場し、打率.291をマーク。打撃の成長は著しい。もともと買われていた守備力も健在で、9月18日、ソフトバンクとの天王山第3戦では、初回1死二塁のピンチに内川聖一が放った大飛球を、フェンスに激突しながらスーパーキャッチ。すぐに二塁へ転送し併殺を完成させ、チームのピンチを救ったプレーは記憶に新しい。
ちなみに、駿太は昨季まで、プロ入り後の代打成績は17打席ノーヒットを継続していた。ところが、今季の6月11日、対DeNA戦ではプロ野球史上9人目となる代打の代打で満塁本塁打を放ち、自らその呪いを解いたのだった。
◎「君コン」No.1選手の復活・・・【解消へ】
秘めたる潜在能力の高さを発揮できないでいる選手、「君はこんなもんじゃない」選手の代表格として挙げられていたT−岡田。過去の野球太郎「君コン」選手ランキングでは、栄えある? 第1位に輝いてしまった。
本塁打王に輝いた2010年以降は伸び悩んできたT−岡田だが、今季は勝負強い打撃が戻ってきた。昨オフから減量に取り組み、現在もベスト体重の98キロをキープ。119試合に出場して打率.273、21本塁打68打点。特に本塁打は2010年以来となる20本超え。T−岡田の復活も、今季のオリックス躍進の原動力であることは間違いないだろう。
思い返せば3年連続最下位に終わった2004年に、近鉄と合併して誕生したオリックス・バファローズ。楽天との分配ドラフトでは有利に選手を獲得しながら、結局、この10年で一度も優勝がない、Aクラス入りも2008年のみと、「合併の呪い」と言われても仕方がない成績しか残せなかった。
しかし、奇しくも球団合併から10年後の今年、6年ぶり2度目のCS出場権を勝ち取ったオリックス。数々の呪いを解消し、チームは本当の意味で生まれ変わろうとしているのかもしれない。
■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。自他共に認める「太鼓持ちライター」であり、千葉ロッテファンでもある。Twitterは
@suzukiwrite
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