今回、「15年目にして初出場」の栗山。それを上回る「19年目での初出場」が過去にふたりいる。記憶に新しい昨年の鈴木尚広(巨人)と、1986年の川藤幸三(阪神)だ。さすが19年目ともなると、自分の魅せ方を熟知しているふたり。ともに“らしさ全開”のオールスターとなった。
「代走の神様」鈴木尚広は、2試合に代走で出場し、見事に2盗塁。打席には一度も立たず、ファンの期待に応えてみせた。
一方、「代打の神様」川藤幸三は、第2戦の9回2死から代打で登場。左中間へのヒットを披露した。ところが、足がとにかく遅いことで有名な川藤。誰もが二塁打と思った打球にもかかわらず、二塁ベースのだいぶ手前で悠々アウト。その光景にファンが爆笑するところまでが川藤のお約束だった。さすがは「浪速の春団治」。
続いてのキーワードは【18年】。これは、西武、ダイエーで活躍した秋山幸二の連続出場回数だ。この記録がすごいのは、すべてがファン投票での選出だった、ということ。この人気ぶりについて、秋山が自著で分析している。
《パ・リーグのチームでしかプレーしたことがないわたしがこんなにも選んでもらえたということは、推測だが日本シリーズでのプレーのインパクトがそれだけ強かったのかもしれない》(秋山幸二『卒業』より)
秋山は1991年(西武)と1999年(ダイエー)の日本シリーズでMVPを獲得。優秀選手にも2度(1987年、1992年)輝いている。また、2球団でのMVP受賞は史上唯一、秋山だけの記録だ。さらに、伝説のバック転ホームインも忘れるわけにはいかない。
オールスターに選ばれるためには、レギュラーシーズンのプレーはもちろん、それ以外の部分でのアピールも重要、ということだろう。
続いてのキーワードは【17年】。これは、古田敦也(元ヤクルト)が記録した、入団からの連続出場回数だ。1990年、ルーキーイヤーにオールスター出場を果たすと、現役引退する前の年の2006年、プレイングマネージャー1年目までの17年間、オールスターに出続けたわけだ。
そしてもうひとつ、オールスターにまつわる「17年」の記録がある。日米7球団でプレーした男・木田優夫が作った「最長ブランク期間」だ。1990年、巨人の先発投手時代にオールスター出場を果たした後、次に出場できたのが2006年、ヤクルトで中継ぎとして活躍した年だった。
木田は以前、『野球太郎』のインタビューで、「古田さんの初出場と最後のオールスター、両方を見守ったのは僕だけ」と語っていた。なんだかそれも、ふしぎな巡り合わせだ。
今回のオールスターでは、交流戦で大ブレイクしたソフトバンクの城所龍磨の出場も期待されたが、監督推薦で選ばれたのは栗山の方だった。城所はプロ生活13年目。実は今季もまだ規定打席に到達していないだけに、14年目の来季以降、あらめてオールスターを目指してほしい。
また、今回のオールスター選手のなかで、最多出場回数は坂本勇人(巨人)と糸井嘉男(オリックス)の「8回」。日本記録は野村克也氏の「21回」だ。ともにあと13年連続で出場すれば、野村氏の記録に並ぶことになる……。ガンバレ!
※「17年連続」としては、長嶋茂雄も入団年から引退年まで、17連連続でファン投票1位という快挙を達成している。だが、長嶋はケガのために一度出場を辞退。日本記録という意味では、古田敦也の「入団以来17年連続出場」が最長となる。
文=オグマナオト