入団から2年間でわずか2勝。岩貞は大卒の即戦力と期待されながら結果を残すことができずにいた。しかし、2015年のシーズンオフに参加したアジア・ウインターリーグで5試合に登板。17回を投げ2勝0敗、防御率0.53の成績で最優秀投手に選ばれた。
この好投をキッカケに、岩貞は昨シーズンの開幕ローテーションを勝ち取り、交流戦までに4勝2敗、防御率0.88の成績を残す。交流戦以降、調子を落とす時期もあったが、9月には4勝0敗、防御率0.58で月間MVPを獲得。シーズン通算でも10勝9敗、防御率2.90と大ブレイクの一年となった。
【2014年シーズン成績】
6試合:1勝4敗/投球回29.1/奪三振21/与四球15/防御率4.60
【2015年シーズン成績】
5試合:1勝1敗/投球回20.2/奪三振11/与四球11/防御率4.35
【2016年シーズン成績】
25試合:10勝9敗/投球回158.1/奪三振156/与四球55/防御率2.90
『野球太郎』本誌のドラフト特集による岩貞の評価を振り返ってみよう。
『野球太郎No.006 2013ドラフト直前大特集号』を取り出してみる。この号はドラフト前に発売されているので、阪神が指名する前の段階での評価だ。岩貞は118名が掲載されている巻頭の「ドラフト候補名鑑」のなかで「ドラフト1・2位候補」に名を連ねている。
そこでの評を見ると「ストライク先行なのに四球」との一文が。確かに、2015年までの岩貞は四球が多く与四球率は4.60、4.79と1試合あたり約5個の四球を出していた。しかし、2016年はコントロールが改善され与四球率は3.13。制球力アップが好投につながったのだ。
「12球団別・ドラフトの焦点はここだ!」という特集での阪神のページを見ると、「実は不足気味の左投手」との見出しがあり、左投手獲得を推している。しかし、岩貞の名前はなく松井裕樹(楽天)、田口麗斗(巨人)が押されていた。結果的に松井、田口ともにプロで活躍しており、ある意味、見立ては正かった……ともいえるのではないだろうか。
また、「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」という特集ページでは、岩貞は憧れの投手として能見篤史(阪神)を挙げている。この時から阪神のローテーション投手となる運命は決まっていたのかもしれない。
続いてドラフト後に発売された『野球太郎No.007 2013ドラフト総決算&2014大展望号』を見てみよう。
特集『プロ野球12球団ドラフト採点』にある阪神のページでは、「即戦力期待の左腕を獲得」という見出しに続き、岩貞についてこの評価されている。
「岩貞自身、あまり自分が即戦力だと思わないほうがいいだろう。好調の時期が今春リーグ戦の後半以降ぐらいで、プロに必要なコンスタントさがまだ備わっていないのだ。ゆえにもう1回、自分を一から鍛え直すほどの覚悟で臨んで欲しい」
つまり、即戦力と期待するには時期尚早。台頭するまでに時間がかかるだろう。そんな評価だったのだ。実際、ブレイクまでに3年かかっているところを見ると見立ては間違っていない。
また、「抜くボールを覚えることが、プロで食っていけるかどうかの境目となる」ともある。2016年シーズンが始まる前、岩貞は憧れの能見から「フォーク、チェンジアップをどういう場面で投げるのか」について教えを請うた。結果、チェンジアップの使い方を意識し、好結果につながった。
岩貞に関して『野球太郎』本誌の評価は、おおむね的中といえるのではないだろうか。
この号では、その他の大卒、社会人出身選手の評価を見てみると東明大貴、吉田一将(ともにオリックス)、大瀬良大地(広島)、石川歩(ロッテ)、柿田裕太(DeNA)らに高い評価が与えられている。吉田はセットアッパーとして定着。大瀬良は新人王を獲得。石川はロッテのエース格に成長し、侍ジャパン日本代表入りも果たした。
ただ、東明は2015年に2ケタ勝利を挙げたものの、2016年は1勝10敗と期待に答えることができなかった。柿田は2016年現在で1軍登板を果たしていない。2人の巻き返しにも期待したい。
※「活躍している若手選手のアマチュア時代はこんな選手だった!」と、いま読んでも楽しめる『野球太郎』の書籍バックナンバー。
Fujisan.co.jpには全号がそろっています。
文=勝田 聡(かつた・さとし)