東京都出身で、二松学舎大付高では、最速148キロのストレート、高校通算43本塁打、50m5秒8という3点セットの身体能力で、投手と内野手として1年生から活躍。甲子園未出場ながら、2012年秋のドラフトで広島から2位指名を受け入団。
背番号が51に決まり、あまりにもイージーすぎる「赤イチロー」などと呼ばれたこともあったが、ルキーイヤーの2013年には1軍で11試合に出場。14打席で1安打に終わったものの、高卒1年目で1軍に呼ばれてヒット打っただけでもプロ選手としては悪くないスタートと言える(広島では、敦賀気比高出身の東出輝裕以来14年ぶり)。
2年目は36試合で規定打席未到達ながら打率.344とポテンシャルを示し、3年目は97試合出場で、そのうち51試合に先発で起用される。レギュラーにあと一歩のところまで迫った。
今季は、リスペクトするソフトバンクの内川聖一に弟子入りして自主トレを行い、バッティングをイチから見直したという鈴木。キャンプで太ももを痛め、1軍登録は4月5日と、やや出遅れたが、4月後半あたりから「6番・ライト」にほぼ定着し、6月16日終了時点で、打率.307、7本塁打、33打点。「内川塾」の効果がしっかり出ている。
6月16日の西武戦でも、「5番・ライト」でスタメン。4回裏の先頭打者でセーフティーバントから、1塁へ果敢なヘッドスライディングを見せると、転がったボールを処理したキャッチャーの悪送球を誘い、二塁まで進む。そこから次打者のライトフライでタッチアップし三進すると、続くヒットで難なく生還。貴重な追加点に絡むとともに、西武の3タテに貢献した。
広島には、田中広輔、菊池涼介、丸佳浩ら足が使える若い選手が上位打線に揃っているが、そこに鈴木が加わることで、さらに攻撃の幅が広がることになる。
6月16日には、エルドレッドが右太ももの故障で登録抹消。全治2〜3週間ということで、戻ってくるのは早くても7月に入ってからになるだろう。かわりにルナが上がってきたとはいえ、アベレージはともかく、パンチ力がそこまであるタイプではない。補完する意味でも、「5番・鈴木」の立ち位置は非常に重要。鈴木がレギュラーに定着し続け、走攻守に躍動するようなら、マツダスタジアムに25年ぶりの紙吹雪が舞うかもしれない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)