【野球太郎的甲子園MIPその1】早川隆久(木更津総合)
最初に1票を投じたくなったのは、木更津総合のエース・早川隆久。
黒田博樹の著書を読んで身につけたというツーシームを武器に、初戦、2試合目とも完封勝利。迎えた準々決勝は作新学院のホームラン攻勢に沈んだが、それでも3点に抑える力投に胸が熱くなった。
スポーツに「たられば」はなしとはいえ、「もしも準々決勝で勝っていたら……」という「if」を思わずにはいられない。
【野球太郎的甲子園MIPその2】 今村豪(中越)
続いてピックアップしたいのは、あと一歩のところで大記録を逃してしまった中越の今村豪だ。
初戦で対戦した富山第一に対して、9回1アウトまでノーヒットノーラン。快挙が目前だったが、ここから立て続けに2本の二塁打を打たれ、まさかのサヨナラ負け。まったく予見できなかった出来事に、見ているこちらが頭を抱えてしまった。
東邦の大逆転劇も記憶に残る試合だったが、こちらもしばらく忘れられそうにない。
【野球太郎的甲子園MIPその3】 多間隼介(北海)
北海は「野球太郎的甲子園MVP」の優秀選手としてエースの大西健斗を取り上げたが、印象に残った選手として決勝戦で大西からバトンを受け取った多間隼介の名も挙げたい。
大西が初戦からフル回転していたため、甲子園初登板が決勝という大一番に。ピンチを颯爽と切り抜け……、とはいかなかったものの、エースが残した6イニングを投げ切ってみせた。
しかも打者としても、途中出場ながら作新学院の今井達也を相手に3打数3安打。来年は多間が北海フィーバーを巻き起こすかもしれない。
【野球太郎的甲子園MIPその4】 山本侑度(履正社)
近年、ロッテの応援歌を流用する学校が増えた甲子園にあって、履正社・山本の応援を聞いたときにハッとさせられた。同じ履正社出身で、プロでも大活躍している山田哲人の応援歌を使っていたからだ。
もちろんそれだけがMIP選出の理由ではなく、先制された横浜戦で追撃ののろしを上げるホームランを打つなど、「恐怖の8番打者」として打線に厚みを与えていたのが印象深い。
その姿はまるで山田哲人のよう、というのは言い過ぎかもしれないが、チームメイトからはとても頼りになる存在だったはずだ。
こうして振り返ると、MVP以上に語りたくなる選手がいることに気づかされ、あらためてすごい大会だったと感慨深くなる。
夏の甲子園が終わると、筆者を含めたファンたちは実際にプレーした選手たち以上に抜け殻のようになるが、仕方のないことなのだろう。
来年は一体どんな球児が、私たちの心をつかむのだろうか。と、その前に、国体や春のセンバツを楽しまねば!
文=森田真悟(もりた・しんご)