◎予告通り、12球団合同トライアウト(21日・第二回)レポート!
今シーズンのタイトルホルダーを表彰する「プロ野球コンベンション」も終わり、国内のプロ野球公式行事が全て終了した今日この頃、ファンの皆様はいかがお過ごしでしょうか。今回のナックル通信では、第1回に続き、11月21日に行われた第2回NPBトライアウトの模様もレポートいたします。申し遅れましたが、私はこの週刊野球太郎で「ベースボールビブリオ」のコーナーを担当しております、鈴木雷人と申します。エッ、皆さんご存じない? 野球太郎の本誌ではまだ記事を書ける実力もなく、今回のレポートはある意味「オレ自身がトライアウトを受けてるのかっ!?」という状況ですが、よろしくお付き合いくださいませ。
今回のトライアウト開催地は千葉県鎌ケ谷市にあるファイターズスタジアム。「濃い」プロ野球ファンの皆様であれば一度は訪れたことがあるかも知れませんが、まだ行ったことがない方は要注意。球場周辺は見渡す限り一面の梨畑…と、情緒あふれる描き方にダマされてはいけません。公式サイトには「最寄り駅から徒歩30分」とありますが、30分も歩き続けると周りには梨畑しかないので道に迷うことは間違いありません。この球場に無事にたどり着く=生き残りをかけたトライアウト…と、思わずツッコミを入れたくなるほど、アクセスの悪さは12球団でもトップクラス。そういえば「梨に向かって打て!」という名のファイターズタウン広報紙もありましたなぁ。
そんなアクセスの悪さにもめげずに、当日の鎌ヶ谷は応援している選手の「最後になるかもしれないユニフォーム姿」を目に焼き付けておこうと訪れた、熱心なファンで熱気ムンムン。午前10時に球場が開放されるとすぐに一塁側と三塁側内野席はほぼ満席状態になりました。しかしながらその内野席と比べて、各球団編成部のために開放されたバックネット裏席は逆に閑散とした状態で関係者の人影もまばら…。うーむ、各球団ともトライアウトへの注目度は低いのか? 選手たちのモチベーションは大丈夫か? という思いが頭を過りますが、どんな状況であってもトライアウトに参加する選手たちには野球を続けられるかどうか、巨人の原辰徳監督風に表現すると「徳俵に足が掛かった」状態。投手も打者もお互い真剣勝負で自身をアピールしなければならないのです。そんなことを考えている間にシートノックが始まり、さあ、球場全体に何ともいえない緊張感が広がってまいりました。
少年隊のアノお方がナビゲーターを務めるアノ番組の影響で、現役時代よりも知名度が増した感がある古木克明選手(元オリックス)は昨年に引き続きトライアウトに参加しました。打席に立つ度に大きな声援を浴び、もはや「初冬の風物詩」といった感もあるトライアウト挑戦。一時は格闘技にも挑戦して、身体は大きくなった印象を受けましたが、正直言ってプレーのキレというかスピード感をあまり感じることはできませんでした。ちなみにシートノックでは強風の影響もありフライをポロリ。観客席から「古木あーっと!」(注・現役時にエラーした際の有名な実況)とツッコミが入ったのは言うまでもありません。
その古木よりもタイミング的に大きな注目を浴びていたのは佐伯貴弘選手(元中日)。ロッテの秋季キャンプに参加して入団テストを受けるも、残念ながらこのトライアウト前に不合格となったという経緯は皆様ご存知の通りですが、その執念には頭が下がる思いで、そのプレーを見守りました。連続四球を選び、最終打席には右中間へ二塁打を放つなどブランクを感じさせない結果を出しましたが、どんな結果が待っているかは誰にも分かりません。
他にも個人的に注目していた橋本将選手(元ロッテ)は腰痛の影響が心配でしたが、攻守ともに無難にプレー。参加者不足のためスタッフとして捕手を務めた大嶋匠選手(日本ハム)、そうですソフトボール出身の彼が捕手を務めた際は何度か投球をポロポロしていたのとは対照的に、橋本は安定したキャッチングをみせていました。しかしながらその橋本に限らず、投手は5人の打者と対戦し、打者は1人5打席までという「縛り」があるなか、そんな短い時間での結果が果たして判断材料になり得るのか、微妙なところだと思いました。そんな各選手に与えられた限られた時間内でも、生山裕人選手(元ロッテ育成選手)はヒットを打つと、すかさず盗塁。本職は外野手ですが、途中にセカンドの守備につくなど積極的に自身をアピールしていたのは印象に残っています。
投手7人、打者9人という参加人数の少なさもあり、お昼過ぎ前には全ての対戦が終了。この原稿を書いている時点では参加者に吉報が届いたというニュースはまだ残念ながら届いておりません。人生をかけた戦いが終わった後の選手たちは何を思い帰路につくのか…とぼんやりと考えている自分はまだまだ甘かった。その後がスゴかった。トライアウト名物でもある、応援している選手への「出待ち」です。古木選手が出てくるやいなや、報道陣や一般のファンが周りを囲み、質問と叱咤激励を繰り返します。古木選手も足を止めて取材やファンの質問に答える姿は潔く、とても格好良かった。「カラダの動く限りは(野球界への復帰は)諦めない」と答えていました。高森勇旗選手(DeNA)もイケメンなだけに女性ファンに囲まれ、丁寧に挨拶などをしておりました。やはりモテる男は違いますね。そして一番印象的だったのは佐伯選手。「グラウンドで待ってるぞ!」「オトコマエ! 来年もプレーを見せてくれ!」といった歓声があがり、大勢のファンに囲まれてしまい、収集がつかなくなったところで駐車場の片隅で即席サイン会&握手会が開かれ、どこからともなく「サ・エ・キ! サ・エ・キ!」の佐伯コールが沸き起こりました。
今回のトライアウト観戦で最も印象に残ったのは、プレー云々ということよりも、実直に好きな選手を追いかけ続ける「プロ野球ファンの熱い想い」です。評論家目線でトライアウトを観ることも立派な応援であり、プロ野球を愛していることに変わりありませんが、トライアウト終了後に大好きな選手と触れ合える一瞬のタイミングに熱い想いを伝えたり、トライアウト中にはスタンドからも、結果を出した選手には「○○選手! トライアウト合格!」という声があがったり、さらには現地に来ることが叶わなかったファンの皆様も、Twitterでの週刊野球太郎のトライアウトレポートをチェックしていただき「○○選手はどうでしたか?」という反応をいただくと「ああ、本当にこの選手が好きなんだな…」と感心させられました。
最後になりますが、現地から鎌ヶ谷のアイドルの日本ハム球団マスコット「カービー」を「カービィ」と呟いてしまいましたが「正しくはカービーですよ」とご指摘を頂戴した皆様、ありがとうございました。やはりプロ野球ファンはアツいです。来年のトライアウトも必ず現地で観戦しますよ!
文=鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。自他共に認める「太鼓持ちライター」であり、千葉ロッテファンでもある。
◎『野球太郎No.002』が発売中! 12月には発売記念トークライブ開催
ついに11月22日(木)『野球太郎No.002 2012ドラフト総決算プレミアム特集号』が発売となりました。来年のプロ野球はどうなるのか? ルーキーたちの活躍は? ドラフト指名選手のこれまでの野球人生とは? 来季のドラフト候補は? などなど、みなさまの興味のど真ん中に、極上の記事たちを投げ込みます。ぜひお楽しみに!