「自分の居場所がない」と、ソフトバンクを退団。11球団どこでもウエルカムで新天地からの誘いを待っていた松中だが、シーズンを終えても年を越しても、その誘いはなく、とうとうキャンプが始まった。春季キャンプでの入団テストを志願するも現時点(2月3日)ではどこからも誘いはない。
一部報道では、国内独立リーグから「NPBからオファーが来るまでうちでやらないか」という誘いはあったという。しかし、松中は全て断ったと聞く。
あくまでも目指す先はNPBのみ。独立リーグや海外でのプレーを選択から完全に外す潔さは、松中らしいといえばらしい。
昨年秋、松中退団のニュースを見た時、筆者はこの後の筋書きを勝手に想像していた。
【想像1】
2006年、大道典良が戦力外通告も現役続行を希望した際、王貞治氏(当時ソフトバンク監督)のはからいで巨人へと無償トレードしたように、松中に対しても王氏が巨人に働きかけてくれるのはないか。
【想像2】
2014年、楽天との契約を解消した佐藤義則投手コーチが、翌年ソフトバンクと契約した際、星野仙一氏がソフトバンク・王会長にお願いしたという噂が出ていたので、今度は松中の事で王氏がお願いしたら、星野氏は断れないのではないか……。
松中の去就については、他にも広島へ移籍か? という噂も出ており、正直言ってどこかの球団が、松中の最後の花道を作ってくれると思っていた。ところが…。
山本昌や小笠原道大ら、ベテランが続々引退し、高橋由伸、金本知憲、アレックス・ラミレスら40代監督が次々就任した今季のプロ野球。
新陳代謝大活発のいま、12年前の三冠王、昔ながらの打撃職人といった肩書は逆に各チームから敬遠されてしまったのか。
「キャンプ中に声が、かからなければ引退する」と宣伝した松中信彦。キャンプがスタートしてから、2月5日現在、他球団から声がかかったという話は聞かない。
元同僚・多村仁志が、まさかの中日ドラゴンズと育成契約を果たしたように松中にも最後の最後で「まさか」を期待したい。
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住。ライター、イベント関連など、スポーツ関連の仕事を精力的にこなしている。北海道生まれなのに、ホークスファン歴約40年。99年ダイエー初Vを福岡ドームで観戦するなど、全国を飛び回りながら、1軍2軍問わずプロ野球を追いかけている。