高校野球では来春のセンバツ切符をかけた春季大会が真っ盛り。日々、新しいドラマが生まれ続けている。週刊野球太郎では「甲子園が待ちきれない! 高校野球最前線・秋の陣」と題し、高校野球の最新情報をお届け。今回は、上位校が決まり出した各都道府県大会の模様を伝えたい。
◎「アナコンダ」の異名に負けない獰猛な打撃
山形県大会で昨秋は優勝、今夏はベスト4と山形の高校野球界をリードする酒田南。今秋も決準決勝に勝ち、4年連続15度目の東北大会出場決めた。その勝ちっぷりは強打を発揮した激しいものだった。
1回戦で山形商を11対2の7回コールド、2回戦で新庄東を16対6の6回コールドで一蹴すると、準々決勝ではライバル・鶴岡東を9対5で下し、準決勝では山形中央に10対4と快勝した。
この爆発力満点の打線の中核にいるのが4番の伊藤海斗だ。計5本のアーチをかけている。打席での重心を大きく沈める特徴的なルーティンから、「アナコンダ」という異名を持つスラッガーだ。
勝ち進めばさらなる強豪が待ち受けるが、それすらも食い荒らして名を上げたい。
前回の「高校野球最前線・秋の陣」で埼玉の強豪・浦和学院の敗退を伝えたが、またもや埼玉で本命候補が敗れ去った。4年連続で夏の甲子園に出場している花咲徳栄が3回戦で埼玉栄に苦杯をなめたのだ。
この試合で先攻の花咲徳栄は3回表までに6点を奪い、ワンサイドゲームに持ち込んだように見えた。しかし、9対3で迎えた8回裏に4点を返されると、9回裏の土壇場で同点に追いつかれる。そして10回裏にサヨナラ打を打たれてゲームセット。9対10で敗れ、センバツ出場が絶望的となった。
埼玉の二強・花咲徳栄と浦和学院が県大会序盤で姿を消した。埼玉に群雄割拠の時代が訪れる前触れかもしれない。
今の東北地区は2人の“佐々木”に注目が集まっている。
まずは大船渡(岩手)の佐々木朗希。「最速157キロの右腕はこの秋季大会でどこまでいけるか」という期待のなかベスト4で終戦を迎え、事実上センバツを逃した。
準決勝で破れた相手が優勝校の盛岡大付ということで、組み合わせのアヤもあったかもしれない。スコアは5対7と僅差だったので、最後の夏に巻き返したい。
もう1人は仙台育英(宮城)の前監督・佐々木順一朗氏。元部員らの不祥事の責任を取って辞任したが、高校野球きっての名将が放っておかれるはずもなく、学法石川(福島)が監督として招聘した。
福島といえば、聖光学院が12年連続で夏の甲子園に出場と一強体制を成している県。しかし、佐々木監督の就任によって風向きが変わるかもしれない。福島の勢力図に注目していきたい。
個性的な高校球児の出現、下剋上、名将の復帰と今回もバラエティに富んだニュースが集まった。前回の当コラムを見ても比較的東北の話題が多いが、それだけいい選手と監督がいるという証拠だろう。
もしかすると来春のセンバツ、夏の甲子園にも金足農(秋田)のような旋風を起こすチームが現れ、悲願の優勝旗を東北にもたらすかもしれない。10月12日から始まる東北大会に注目だ。
文=森田真悟(もりた・しんご)