【2018年夏の甲子園 愛媛みどころ】「焦りは禁物」将来考えて土居は慎重に 素質ある野手のキーワード「現状突破」
投手編〜もどかしい松山聖陵・土居の状態
「困った」。
これが松山聖陵・土居豪人に対するNPBスカウト陣からの共通言語である。
センバツで最速147キロを出したように素材は一級品。
ただ、彼自身はセンバツ前から抱えていた成長痛が股関節痛となり、現在は投球フォームを再チェックしつつ、慎重に夏への調整を進めている状況だ。
「(アドゥワ)誠(広島)と比べてもまだ完成されていない。
彼には将来があるので」と、荷川取秀明監督も急ピッチ回復を求めない構えである。
はたして最後の夏、無限大の可能性を秘めた大器は全貌を見せてくれるのか? とりあえず私たちは「トランキーロ! あっせんなよ」で待つしかない。
■本格派そろう2018年えひめ
今年の愛媛県はそんな土居の他にも本格派右腕が多い。
檜垣柊志(今治工)は高校入学後に捕手から転向し、最速139キロ。
2年夏は右肩痛で苦しんだ田中大成(八幡浜)も最速143キロに達し、完全復活で最後の夏に臨めそうだ。
昨秋は公式戦全試合登板。
春県大会も大半の試合を投げ、それでもケロッとしているのが最速142キロ右腕・山口直哉(済美)。
先輩・八塚凌二(伯和ビクトリーズ)が最後に会得した力の加減乗除を覚えれば、愛媛大会連覇の立役者になれる。
聖カタリナ学園は、最速138キロ右腕・新保雄太郎と最速140キロ右腕・田中拓磨(2年)の2枚に軟投派を組み合わせて、創部3年目の快挙を目指す。
一方、1年秋からエースを競い合ってきた宇和島東の菊池来樹と内田健太の左腕2枚看板も最後の夏。
菊池は内田からクロスファイヤーのイメージを、内田は菊池からスライダーの曲がるイメージを重ね合わせ、二人三脚で8年ぶり甲子園に到達したい。
田井惣士(新田)は練習試合でのパフォーマンスが出せれば、四国でも上位クラスの右腕。
清木克洋(西条)や近藤友貴(川之江)の左腕エースたちはテンポと制球力向上で勝負をかける。
野手編〜「現状打破」が突破のかぎ
この春、大旋風を巻き起こした聖カタリナ学園。
そのキーワードは「現状打破」だった。
大森貴仁は「大柄・がっちり」のイメージの真逆になる俊敏さを貫き、秋は控えだった兵頭和弥は空振りでバランスを崩すほどのフルスイングで相手投手に脅威を与え続けた。
一方、名門・松山商も春先からは2年生の佐藤勇斗、大村玄といった2年生を中心に本塁打数が増加。
一塁手と捕手を兼任する佐藤は来年以降、大森や上甲凌大(宇和島東)といった強肩捕手の座を継承できる好素材である。
また、松山中央ボーイズ時代は根尾昂(大阪桐蔭)らが集ったボーイズジャパンで、主将を務めた播田大和(小松)や、池内優一(済美)もプレーでリーダーシップをとる好漢だ。
ただ、甲子園での貴重なプレー経験を生かしきれていない矢野功一郎(済美)と富里尚史(松山聖陵)を筆頭に、いまだ現状打破を果たせていない選手は数多いのが残念なところ。
特に3年生たちは最後の夏、悔いを残さず、今の殻を破ってほしい。
大会展望〜カギを握るのは松山聖陵・土居の出来
シード校は松山聖陵、聖カタリナ学園、済美、西条の4校だが、昨秋、松山聖陵に中予地区予選で敗れた聖カタリナ学園が春県大会初優勝したように、シード、ノーシードは実力差を表す指標とはなりえない。
ただ、間違いなく言えるのは、松山聖陵・土居の状態が大会を左右するということ。
彼が完調であれば、松山聖陵の春夏連続甲子園は大きく近づくし、そうでなければ混戦状態。
最終的にその間隙をついたチームが、愛媛の100回大会王者の称号を得ることになるだろう。
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