左足を胸のあたりまで上げるダイナミックなアクションを起点としながら、肩関節の可動域の広さと、上体と腕のしなりを生かして、フィニッシュまでが非常になめらかなフォームで投げる佐々木朗希(ロッテ)。
大船渡高時代に163キロを叩き出し、昨秋のドラフト1位でロッテに入団。当然ながら、メディアの注目度は最高レベルで、連日、一挙手一投足が報じられていた。
2月のキャンプイン以降、捕手を立たせて投げたケースも含めてブルペンには5度入り、フリーバッティングにも3月24日、27日と2度登板している。
3月24日、初のフリーバッティングへの登板では25球を投げ、最速157キロをマーク。その前の投球練習では158キロも計測していた。2度目の27日も40球を投げ最速156キロ。変化球も交えて、打者との対戦を楽しむかのように、白球の感触を確かめていた。
このまま順調にいけば、4月3日にシートバッティング、さらには紅白戦や練習試合での実戦登板とアクセルをふかしていく予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、チームは活動中止を余儀なくされ、このプランも白紙となってしまった。
その後、4月11日に球場での自主練習をチームが解禁したが、15日にそれも再度中止に。現在は、選手寮でのウエートトレーニングなどで体を動かしている模様だ。
辛口評論でおなじみの張本勲さんは、レギュラー出演している『サンデーモーニング』の中で、「私が見てきた高卒ルーキーの投手では、尾崎(行雄/元東映)に次ぐ存在だ」と称賛。他にも、佐々木のピッチングを見た解説者からは「モノが違う」との評価が相次いだ。
また、井口資仁監督は、球団の公式インスタグラムの中で「先発として年間を通して長いイニングを任せたいという想いが強いです。田中将大投手(ヤンキース)がイーグルス時代に打ち立てた無敗記録を塗り替えて欲しいと思っています」と壮大なリクエスト。さらに「170キロを出す可能性は十分ある」と、将来像にまで言及した。それだけのポテンシャルを感じているという証だ。
やはり、これからの課題は、プロで1年間、プレー、練習を続ける体力をつけることだろう。
これは、高卒選手に限らないが、鳴り物入りでプロに入った好素材でも、必ずと言っていいほどぶつかるのが、「毎日試合・練習がある」ことのハードさだ。たしかに猛暑の日中に行なわれる夏の大会で、高校生が汗まみれ、泥だらけになってプレーする姿は、見た目にも大変そう。しかし、半月ほどの間に多くても6試合程度。約7か月間で143試合プラスアルファの試合数を消化するプロ野球とは、心身の負担がまるで違う。
「プレーは通用しないことはないと思ったが、試合が毎日あるので体力的にキツかった」
多くのゴールデンルーキーたちが、1年目を振り返って、異口同音にこう漏らしている。
佐々木の場合、使える段階まで仕上がってくれば、井口監督も示唆しているように、おそらく先発ローテションに入ることになる。登板は週1回程度なら、野手よりは体調管理がしやすいだろうが、それでも毎試合、プレッシャーの掛かる中でのピッチングは、楽ではないはず。
長身で細く映る体型だけに、下半身の強化を求める声も多いが、スタミナアップのためには、体幹や心肺機能といった内面の補強も不可欠だ。
もう一つ気になるのは、近年、ロッテのドラ1が、期待ほどのパフォーマンスを残せていないこと。
2014年のドラ1は中村奨吾で、ここ2年、二塁のレギュラーとしてほぼ全試合に出場し主力選手へと成長を遂げているものの、それ以降の2015年・平沢大河、2016年・佐々木千隼、2017年・安田尚憲、2018年・藤原恭大は軒並み伸び悩んでいるのが現実。もちろん、高卒なら、4、5年目あたりで台頭してきても20代前半なので、まだ待つ余地はあるが、どの選手も入団時のスポットライトが強めだっただけに、彼らに物足りなさを感じているロッテファンは少なくないのではないか。
そんな流れを、佐々木が断ち切れるかどうかにも注目したい。
(※写真は大船渡高時代)
文=藤山剣(ふじやま・けん)