3月26日、センバツ7日目。第2試合、第3試合はいずれも引き分け再試合となった。これらの試合を戦った福大大濠の三浦銀二の投球数は196。そして、福井工大福井の摺石達哉の投球数は193を数えた。
1日空けて行われた再試合でも三浦は先発し、130球で完投勝利を挙げた。さらに勝ち上がれば、これからもエースとしてマウンドを守り続けることだろう。
最近のプロ野球で投球数が物議を醸したのは、2013年の日本シリーズ・楽天対巨人の第6戦、第7戦だ。楽天の田中将大(現ヤンキース)は第6戦で160球を投げ切り、第7戦でもクローザーとして登板。魂を乗せた15球を投じた。炎症を起こしていたヒジをケアするためには安静が必要だったが、2連投したことで賛否両論を呼んだ。
思えば田中将大も2006年の夏の甲子園では165球を投じた試合が2試合あった。その2試合目は斎藤佑樹(現日本ハム)を擁する早稲田実との伝説の決勝戦。翌日の引き分け再試合でも84球の熱投を見せた。
高校時代からの蓄積疲労は大きく、メジャーに渡った2014年は旋風を巻き起こしながらも、夏に右ヒジ靭帯を部分断裂。秋までリハビリの日々を送っている。
野球の国・アメリカでは球児への投球数制限は徹底されている。特に子どもは、関節の軟骨が固くなる前に肩ヒジを酷使することで、スポーツ障害を引き起こすリスクが高いからだ。
また、アメリカでは「投手の肩ヒジは消耗品」という認識が浸透しており、リスク管理が日本より徹底されているのだ。
先日のWBCにおいても、先発投手が投球制限によって降板するシーンを多くの方が目撃したことだろう。こういった投手の「資源」を守ろうとする環境作りはグローバルスタンダードになりつつある。これは、休養日をどれだけ確保すべきかという判断と同様に重要な問題である。
日本ではチームへの貢献度が先立ち、個人に大きな負担をかけてしまう風潮がある。選手が長く野球をプレーし、ファンが観戦を楽しめる文化を守るために、選手の健康を重んじる風潮に目を向けなければならない時代に差し掛かっているのではないか。センバツを見ながらそう思った。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)