佐久長聖の甲子園初出場は1994年の夏(当時、佐久)。準々決勝でその大会の優勝校・佐賀商に延長戦で惜しくも敗退したが、いきなりベスト4に輝く快挙。これはよく覚えている。
当時、筆者も高校生だった。結局、他校に進路を決めたため通学することはなかったが、高校受験で同校に合格した縁もあり、ブラウン管の前でひときわ応援に熱が入った。ましてや初戦で姿を消すのが長野代表校の「テンプレ」だったところ鮮やかな快進撃だったから、なおさらだ。
その後コンスタントに出場を重ねたものの、2002年の出場を最後に甲子園から遠ざかった。2012年春、前田健太(ドジャース)や今江敏晃(楽天)在籍時のPL学園で指揮を執った藤原弘介監督を招聘。すると、その年の夏に10年ぶりに甲子園へ出場。今夏は藤原監督の下で3度目の出場になる。
2年前の夏は2回戦の聖光学院戦で2対4の接戦で敗退しているだけに、その悔しさをバネに1つでも多く勝ち進んでもらいたい。
そんな佐久長聖球児のなかで、ひときわ注目したい選手がいる。主将の元山飛優だ。U-18の侍ジャパン候補とも目される、プロ注目の内野手である。
安定感のある軽快な守備に加えて、打球を広角に飛ばすことのできる左の好打者。2014年の甲子園・初戦では1年生ながら1番・サードで先発出場し、サウスポー相手に初回先頭打者安打。巧みにライト前に弾き返した。
今夏の長野大会では3番・ショートでプレー。準々決勝では攻撃の起点となる右中間三塁打を打ち返すと、準決勝では1点を追う8回無死一、二塁で相手のタイムリーエラーを誘うセーフティーバントで逆転勝利に貢献。決勝戦では1点リードの5回1死一、三塁で、貴重な追加点となる犠牲フライを放った。
じつは佐久長聖からNPBに進んだプロ選手はここまでゼロ。近年ではライバルの上田西から藤澤亨明(西武)、松本第一から百瀬大騎(DeNA)らがドラフト指名されているが、同校からはいまだになし。
今夏、夢の聖地で元山が躍動し、「佐久長聖出身・第1号プロ野球選手」の切符を掴むことができるか注目したい。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。