春はセンバツから──。
第85回選抜高校野球大会も、残すところ準決勝・決勝戦を残すのみ。
注目されていた、大阪桐蔭「史上初」の3季連続優勝、は惜しくも成りませんでしたが、今大会は他にも様々な「史上初」が生まれました。決勝戦を前に一足早く、「初」を切り口に今大会を振り返ってみましょう。
【21世紀枠が生んだ「史上初」】
今大会、東北地区からは仙台育英(宮城)、聖光学院(福島)の他、21世紀枠でいわき海星(福島)が選出。また、85回目の記念大会であったことから、通常の21世紀枠以外にも「東北絆枠」が新設され、山形中央(山形)が選出された。さらに、仙台育英が昨秋の明治神宮大会優勝校であることから、もう一枠東北地区の出場枠が増え、盛岡大付(岩手)も選出。結果、東北地区から5チームも選出されるという「史上初」が生まれた。このうち、21世紀枠で出場したいわき海星以外の4校がそろってベスト16に進出。決して話題先行ではなかったことを裏付けた。
2日目第1試合で実現したのが、「大会史上初めて」21世紀枠同士の対戦となった遠軽(北海道)対いわき海星(福島)。この試合、遠軽がいわき海星を下したのだが、もう一つのトピックスが戦後最短の1時間16分で終了した試合時間。両校の投手のテンポの良さと好守が目立つナイスゲームだった。
21世紀枠・西日本地区からは私立土佐高校(高知)が選出された。私立高校の選出は21世紀枠が始まって以降、13年目にして「史上初」。土佐高校はかつて夏・春とも甲子園準優勝の実績がある野球名門校。しかし、四国でも屈指の進学校であるため、この20年は甲子園の土も踏めない状況が続いていた。今回は、創部以来の伝統である「全力疾走」を貫く姿勢が評価されての選出。過去、私立高校は21世紀枠の候補になるものの選ばれたことはなく、“公立でなければ選ばれない”という空気があったため、全国の他の私立高校野球部にとっても大いなる希望となる選出となった。
【名門校ゆえの「初」ドラマ】
甲子園で数々のドラマを生んできた名門・早稲田実業(東京)。その伝統校が生んだ「初」の出来事は、今大会で初めて、初等部(小学校)出身者2人が甲子園の土を踏んだこと。メンバーの2人はともに控えの3年、矢野匠内野手と小宮山将投手。初等部は'02年開校で現在の3年生が1期生。野球部員45人のうち、3年生7人、2年生2人が初等部出身である。和泉実監督からは「長く早実にいる君たちが頑張れば、チームはもっと強くなる。プライドを持ってやろう」と励まされてきたという。今後、「甲子園に出るためのお受験」が加速するのだろうか!?
今大会で春夏通算21回目の甲子園出場となる名門・常総学院(茨城)。これまで記録員は登録外の選手や男子マネジャーが務めてきたが、木内幸男前監督からバトンを受け継いだ佐々木力監督が就任した'11年8月以降は「平等にチャンスを与えたい」と方針変更。昨秋の県大会からスコアをつけてきたマネジャー:大関麻未さんが、常総学院「初」となる甲子園のベンチ入りを果たした。大関さんは母親も元高校野球のマネジャー。ここにも、野球が生んだ「親子鷹」の物語があった。
【16歳が実現した「史上初」】
今大会では “センバツ応援イメージキャラクター”が生まれ、PR活動に一役買った。選ばれたのは、昨年の第13回全日本国民的美少女コンテストでグランプリを受賞したタレント、吉本実憂(16)。センバツでイメージキャラクターを起用するのは「史上初」。就任発表記者会見では「夢を追いかけているのは私も一緒。同世代の人たちを全力で応援したい」と目を輝かせていた。
今大会で一躍脚光を浴びたのが、済美(愛媛)の安樂(あんらく)智大投手(16)。5日目第1試合の広陵(広島)戦で延長13回、232球を投げ抜き、チームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。さらに球場を沸かせたのが初回に記録した球速152キロ。2年生投手ではセンバツ「史上初」の150キロ超えをマーク。これは、甲子園を150キロで湧かせてきた歴代の怪物たち…松坂大輔(インディアンスマイナー)・菊池雄星(西武)・大谷翔平(日本ハム)・藤浪晋太郎(阪神)らもなし得なかった記録となる。今大会だけでなく、今後の高校野球を語る上でも活躍が見逃せない選手だ。